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4話

夕刻になり、わたくしは帰路についた。ラルフローレン公爵邸を後にする。馬車に乗る時にラウル様とおじ様、レアン様が家令と共に見送ってくださった。

窓越しに手を振りながらラウル様に笑顔で応える。皆様の姿が見えなくなるとわたくしはクッションに体を沈めた。ラウル様の紅い血がまだ、脳裏から離れない。

あの時はヒヤリとした。まさか、黄薔薇の花を好きだと告げただけで嫉妬をされるとは思わなかった。

まあ、花を握りつぶしたりはせずに手折っただけなのはわかっているけど。それでも、ラウル様の嫉妬深さは相当だと思った。何で、薔薇にも嫉妬するのか解せないところもある。

そんなわけでわたくしは自邸に帰ると父様や母様に今日あった事を話した。

「…まあ、そんなことが。シェリアに怪我がなくて良かったわ」

そう言ったのは母様だ。父様もまったくだと頷く。

「ラルフローレン公爵やレアン夫人もさぞや驚いておられたろうに。刺抜きは大変だっただろう?」

父様が聞いてきたので曖昧に笑う。

「いえ。医師を呼びましたし。けど、治るのには半月ほどはかかると聞きました」

「半月も。ラウル殿がね」

父様は片眉を器用に上げてふうむと唸った。母様もまあと声をあげて目を見開いている。

「ラウル様の怪我はそんなにひどいの?」

「その。手に棘がたくさん刺さっていて。数えただけでも六本は刺さっていました。それと切り傷も何故かあって。消毒するのも大変そうでした」

母様に問われてわたくしは簡潔に説明をした。すると、母様は痛ましげに眉を潜めた。

「そうだったの。六本もね。そりゃあ、消毒の時は痛かったでしょうよ」

「…医師にお薬を塗ってもらう時も痛そうになさっていましたね。まあ、塗り薬と化膿止めを後で処方されていました」

「ラウル様ったら。よほど、黄薔薇の花をシェリアに贈りたかったのかしらね。まあ、白薔薇や赤薔薇と違って黄薔薇は再燃した想いという花言葉がこちらにはあるけど」

わたくしは意外な事を言われて唖然とした。花言葉ですって?

「あのう。母様、花言葉というのは?」

「あらら。シェリア、知らなかったの。白薔薇は純潔、赤薔薇は愛情で黄薔薇が嫉妬という意味くらいは各国共通のようなのだけど。フォルド王国ではそれに加えて白薔薇は純愛、赤薔薇は求婚や燃え上がる愛情、黄薔薇は秘めた想いとか再燃した想いとなっているのよ」

「それが込められた意味という事ですか」

問いかけると母様はそうよと頷いた。父様は懐かしそうにしている。

「ああ、そうだよ。でも懐かしいな。シンデイに求婚した時に赤薔薇を渡した事があったね」

「ええ、そうだったわね。あなたときたらすごく緊張した顔で渡してくるのだもの。驚いたわ」

二人して惚気始めた。すっかり、二人の世界だ。わたくしはやれやれと思いながらその場を後にした。



父様と母様を置いて自室に戻る。侍女がすぐにやってきてドレスからワンピースに着替えるのを手伝う。髪を下ろしてお化粧も落として寝室に向かった。

メイアは心配そうにしていたが。一人にしてほしいと言うと部屋を出て行った。

わたくしはラウル様の怪我を思い出してほうとため息をついた。母様の話してくれた事が当たっていたとしても自分のせいで好きな人が傷つくのは嫌だ。

胸が軋むように痛い。ベットに寝転がるとクッションにまた埋もれる。涙が今更出てきた。

声をあげることなく泣いていたのだった。後で様子を見に来た兄がラウル様をぶん殴ると言ったのはまた、別の話だ。

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