37話
久しぶりの更新です。
わたくしはエルジェベータ様を見つめた。
「エルジェベータ様。わたくしはラウル様と別れるつもりはありません。結婚もします」
はっきりと告げれば、緑色の瞳を細めてエルジェベータ様は笑った。にこりといった言い方がぴったりだった。
「いいお返事です。あたくし、安心しました」
「そうですか?」
「ええ。もしかしたらラウル様と別れるとおっしゃるかもと思っていましたので」
エルジェベータ様は良い笑顔で意外な事を言った。わたくしは驚きのあまり、固まる。
「あ。誤解なさらないでね。あたくしはシェリア様とお会いするのはこれが初めてですから。どう思っているのかわかりませんでしたのよ」
「はあ。わたくしもエルジェベータ様とは初対面ですし。同じようにあなたの事はわかりません」
そうですよねとエルジェベータ様は苦笑する。
「シェリア様。あたくしとの取り引きは成立しました。後はアリシアーナ様を追い落とすだけです」
「…はあ。わたくしがラウル様と結婚するだけでいいんですか?」
「ええ。後はあたくしがやります」
エルジェベータ様はにんまりと笑った。わたくしは何ともいえない気持ちになったのだった。
その後、謁見の間から母と共に出た。父は陛下と話があるとかで一緒には来なかった。
「…エルジェベータ様はなかなかな方だったわね」
母がぽつりと呟いた。わたくしもそれには同意だとばかりに頷いた。
「そうね。わたくしもそれは思います」
「けど、ああいう聡明な方だったら王妃になられてもうまくやっていくでしょうね」
母は気を取り直すように笑った。わたくしは何ともいえない気持ちになったのだった。
「シェリア。お帰り」
父が兄と一緒にエントランスホールで迎えてくれた。
「ただいま帰りました。今日はお二人とも仕事が早く終わったんですね」
「ああ。シェリアが王城に行っていたと聞いてな。母上も一緒だというし。父上と二人で出迎えようと話してたんだ」
兄が悪戯っぽく笑いながら言った。
「そうだ。シンデイ、一緒に行けなくて悪かった」
「いいえ。気にしないでくださいませ、旦那様」
父が謝ると母はにっこりと笑った。兄とわたくしは居た堪れなくなる。
「兄様。どうしましょう」
「そう言われてもな。お前だってラウルといる時はあんな感じだぞ」
「そうなんですか?」
わたくしがきくと兄は気づいていなかったのかと苦笑した。
「まあ。好きな奴と一緒にいたら嬉しくなる気持ちはわからんでもないな。ただ、見る分には目に毒だが」
「…はあ。兄様にきいたわたくしがバカでした」
「何でそうなる。俺はただ思った事を言ったまでだぞ」
兄に言うと憮然とした表情になる。わたくしはため息をつく。
「だから、兄様は無神経と言われるんですよ。わたくし、そうしみじみ思いました」
「あのな。無神経はないだろ」
「撤回はしません。兄様、少しは婚約者の方に優しくなさいませ」
わたくしは言い返すと踵を返した。まだ、文句を言う兄はほっといて自室に戻ったのだった。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
メイアが応接間で待っていた。わたくしはただいまとだけ言うとソファに座る。
「…ふう。疲れた」
「お疲れ様です。今日は王城に行かれていたとか。大丈夫でしたか?」
「うん。陛下と王妃様と。後、エリック殿下の婚約者の方とお会いしたわ」
わたくしがそう答えるとメイアはそうですかと言う。
「殿下の今の婚約者というと。エルジェベータ様でしたか」
「そうよ。わたくしにも挨拶をしてくださって。お話をしたのだけど。なかなかに度胸のある方だったわね」
「はあ。エルジェベータ様は侯爵家の方でしたね」
そうよと頷いた。メイアは考え込んでしまう。
「どうかしたの?」
「いえ。エルジェベータ様は確か、第二王子殿下の婚約者でいらっしゃいましたよね。それが第二王子殿下はご病気で。そのせいで婚約を解消したと聞きました」
「…え。そうだったの。それは知らなかったわ」
わたくしがいうとメイアは苦笑した。その後、エルジェベータ様の事について説明を受けたのだった。




