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35話

わたくしは父から言われた事を考えていた。


まさか、陛下がわたくしとラウル様との子供を養子、もしくは孫の婚約者にと望んでいらしたとは。確かに次代の王としてエリック様ではいまいちだし頼りないが。エルジェベータ様には一度お会いしてこの事も含めてお話をしないといけない。

ふうと今度こそため息をついた。気が重い。何でわたくしがと思う。

仕方ないと腹を括る。ラウル様にもお話をして相談をするか。それからだ、エルジェベータ様にお会いするのは。くっと顔を上げてよしっと気を入れ直したのだった。



あれから、ラウル様に陛下のご依頼について説明をした。父に言われた日の翌朝に言った。ラウル様は最初は難色を示していたが。

話を聞く内に迷惑そうな困ったような表情を浮かべていた。

「…ふむ。兄上が私とシェリアに子供が生まれたら養子にしたいと。もしくは孫の婚約者でもと。何とも困った事を言うな」

「ラウル様。わたくしは娘が生まれたら婚約者にというのには賛成です。息子を養子入りさせるのは色々と面倒そうなので。陛下にはそう申し上げてはどうでしょう」

「わかった。養子入りは反対だが王子の婚約者の件はお受けすると。そう奏上するよ」

「そうしていただけますか」

「私もそれには賛成だ。息子を養子入りさせようものならややこしくなりそうだからな」

そうですねと頷いた。ラウル様はわたくしの髪を撫でるとじゃあと言って立ち上がる。

「早速、王城に行ってくるよ。兄上と相談しないといけない」

「ええ。お願いします」

そう言うとラウル様は髪から手を離した。部屋を去っていくのを見送ったのだった。


ラウル様が王城に行った後、父の執務室を訪れた。

ドアをノックしてから中に入る。父はメイアに伝言を頼んでおいたのでわたくしが椅子に腰掛けても怒らなかった。ただ、冷静な表情で見ていた。

「シェリア。それでラウル様には話したのか?」

「ええ。お話をしました。それでラウル様は王城に行って陛下と相談をするとおっしゃっていました」

「…その。ラウル様は何と言われていた?」

「ラウル様は息子を養子入りさせるのは色々とややこしくなりそうだと。なので娘を婚約者にという方で話は纏まりました」

「ふむ。そうか。確かに養子入りはな。ラウル様の判断は正しいかもしれん」

父はそう言いながら額に手を当てた。ふうとため息をつく。

「だが。シェリア、お前はお腹を痛めて生んだ子を王家に取られるのは嫌だろう。孫娘を王妃にというのもわたしにしてみれば、腹が立つというのに」

「父様。まずは陛下のお答え次第です。ラウル様がうまくとりなしてくれるとは思いますけど」

わたくしが言うと父はそうだなと頷いた。

「まあ。シェリアの言うようにラウル様に任せようか。陛下に一言文句を言いたくはあるがね」

わたくしは苦笑した。父も困ったように笑う。

「エルジェベータ様にもお話をします。この事はフイーラ公爵家だけの問題ではありませんから」

「そうだな。エルジェベータ様は将来の孫娘の義母君になるのだし。シェリア、シンデイと一緒に王城へ行って陛下と王妃陛下、エルジェベータ様に会って来てくれ」

「わかりました。陛下方にお会いして今後のことを相談してきます」

頼むと言って父は笑みを深めた。わたくしも頷くと立ち上がった。

失礼しますと言って執務室を出たのだった。



翌日、母と一緒に王城に出向いた。馬車に揺られて王城に入る。門を通り過ぎて文官さん達の使う棟の近くで降りた。廊下を歩いて陛下方が待つ謁見の間に急いだ。

母もよそ行きの笑顔を浮かべて優雅に歩く。先導に騎士が前を歩いている。

王城の中に入ると緊張と不安から口の中がからからに乾いた。それでも謁見の間にたどり着くと重厚な造りの扉を両脇に控えていた騎士が開けた。

ふかふかの紅の絨毯の上を歩いて玉座の近くで立ち止まった。頭を下げてドレスの裾を摘み、片足を後ろに引く。膝を曲げてその姿勢で陛下方の入室を待った。

侍従が陛下方の入室を告げた。

「…国王陛下、王妃陛下がお入りになります!」

わたくしと母はさらに頭を下げた。玉座に誰かが座る気配がする。

「頭を上げよ」

静かな威厳のある低い声が謁見の間に響いた。母が先に頭を上げたらしい。わたくしも母の呼びかける声で頭を上げた。

玉座には金色の緩やかにウエーブした髪と青の瞳が印象に残る四十くらいと思われる男性が座っていた。隣には白金の髪と紫色の瞳のすらりとした女性とまだ若い黒髪に淡い緑色の瞳の神秘的といえる美少女が立っていた。

「…今日はよく来てくれた。久しぶりだな、シンデイ殿。それにシェリア殿。ラウルから話は聞いた。何でもわたしや王妃のサデイア、エルジェ殿に相談をしたいとか。もしやとは思うが。養子の件だな?」

「そうでございます。娘もラウル様とお話をしまして。養子入りは辞退したいと。その代わり、娘が生まれましたら。王子殿下ー将来の王太子様の婚約者にとの事でして」

「ふむ。確かに養子入りとなるとエリックを王太子から外さねばならない。だが、エリックの息子にシェリア殿達の娘さんを婚約者にという方がましかもしれん」

金色の髪の男性ー陛下は母の言葉にふむと頷いた。

「…陛下。わたしからもよいでしょうか?」

「ああ。サデイア、どうした」

「シェリアさんは元々、エリックの婚約者でした。ラウル様とのお子さんとなるとエリックがごねないかしら」

王妃陛下のお言葉に謁見の間は一気に冷え冷えとした空気に変わった。

わたくしはさてと考え込んだのだった。

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