表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/44

31話

エメラルド夫人と三人で母の私室に向かう。


「シェリア様。もしや、息子に気を使ってくださいましたの?」

エメラルド夫人が問う。わたくしは頷いた。

「ええ。女性が苦手だとおっしゃいましたから。兄がいち早く気づいたみたいで教えてくれたんです。それでご本人にも父や兄と話していただければいいと言いましたし」

「息子がすいません。エリカがあの子に冷たく当たったせいかいつの間にか女性が苦手になってしまったようで。シェリア様には気を使わせてしまいましたわね」

「気になさらないでください。わたくしも無理強いする気はありませんから」

「何から何までありがとうございます。お礼は必ず致しますわ」

エメラルド夫人は深々と礼をしながら言った。


その後、エメラルド夫人に母は言葉の通りに珍しいお菓子や東国原産の緑茶を出してきた。

お菓子はアズキという豆を使ったヨウカンというものだ。アズキを煮詰めて砂糖を入れ、固めたお菓子だと母は説明してくれた。

「ヨウカンはね、東国でも高級品でお客様にお出しするお茶菓子だそうよ。わたしも食べてみたけどなかなかに上品で控えめな甘さだったわ。美味しいと正直思ったの」

「まあ。緑茶もヨウカンも初めて見ました。シンディ様はもともとご実家が手広く商売をなさっていましたわね」

「ええ。今は兄が当主になりましたけど。わたしが東国の茶菓子が欲しいと申しましたら取り寄せてくれたんです。緑茶はヨウカンに合うからと一緒に送ってくれて。エメラルド様、召し上がってみますか?」

母がにこやかに笑いながら言う。エメラルド夫人は頷く。

フォークではなく竹で作られたヨウジで切り分けてヨウカンをエメラルド夫人は口に運んだ。しばらくしてこくりと彼女は飲み込む。

「…まあ。何とも美味な茶菓子ですね。パイやケーキとは違ってあっさりしているわ。それにシンディ様のおっしゃる通り、上品な甘さで」

「でしょう。わたしもこれは旦那様にも召し上がっていただいて。なかなかに美味だと合格点をもらえましたから」

母とエメラルド夫人は続いて緑茶を飲んだ。わたくしもヨウカンをヨウジで切り分けて食べてみた。口の中でほんのりとした甘さが広がる。

上品で控えめ、その通りだと思った。飲み込んでから緑茶も口に含む。苦いけど不思議とヨウカンの甘さのおかげで中和される。香りは紅茶とは違って渋いけど爽やかな感じだ。

「母様。確かにどちらともおいしいですね。伯父様にお願いした甲斐がありました」

「ふふっ。そうね。シェリアも気に入ってくれたようね」

「はい」

わたくしが頷くとエメラルド夫人も目をきらきらと輝かせながら言った。

「わたしもそう思います。これだったらうちの夫や息子も食べれそうです」

「エメラルド様も気に入ってくださったようですね。もしよろしければ、まだヨウカンと緑茶がありますから。お邸に持ち帰られますか?」

母が尋ねるとエメラルド夫人は是非と頷いた。

わたくしも侍女にお代わりを頼んだのだった。


その後、話が終わったらしいエルトン様が母の私室にやってきた。といっても、兄と侍女のメイアが一緒にいたが。

メイアがドアを開けてエルトン様のお話は終わったと知らせてきた。エメラルド様はヨウカンと緑茶を既に食べ終えていてすっくと立ち上がる。

「あら。エルトンもお話が終わったようですね。では、シンディ様。シェリア様。わたしはこれで失礼致します」

「ええ。道中お気をつけて」

「優しいお言葉ありがとうございます。ではごきげんよう」

エメラルド夫人は軽く礼をするとそのまま、母の私室を出ていった。

「シェリア。悪いけどエメラルド様とエルトンさんの見送りをお願い。トーマスも一緒に行ってくれると思うけど」

「わかりました。じゃあ、行ってきます」

わたくしが頷くと母はごめんなさいねと言いながらも笑顔で送り出してくれた。母の私室を出て兄と玄関ホールに向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ