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30話

翌日、わたくしは母とエメラルド夫人宛に手紙を書いた。


母も彼女宛の手紙を出すと言ってくれたのでわたくしはほっとした。ラウル様にも知らせると言ったのもある。母であれば、エメラルド夫人にうまいこと言ってくれるからというのも一つの理由だった。

さて、自室に戻ってメイアに手紙を書く準備を頼んでエメラルド夫人にお返事を書く。

<エメラルド様へ

このたびはお手紙をくださりありがとうございます。

何でもエリカ様の事で我が家にいらっしゃりたいとか。その旨は母にもお伝えしました。母も説明をしたら了承してくれました。

また、わたくしと一緒にお返事を出したいと言っていまして。

もう一通届いているとは思いますけどそちらは母からのものですので。

また、ご子息もいらっしゃるとありました。大変驚いております。けど、妹君の事を考えておられるんだなと思いました。

では、お元気で。

シェリア・フィーラ>

そこまで書いて封筒に入れた。メイアに言って封蝋してもらう。

執事にいって届けたのだった。



あれから、母もお返事を出してから一日が経った。

母と父、兄にわたくしの四人でエメラルド夫人とご子息のエルトン様を待っていた。玄関ホールでだが。馬車の音がして停まったらしい。執事や父たちに促されて門前まで出た。馬車の扉が開いて金色の髪に青みがかった緑色の瞳が印象的なエメラルド夫人が栗毛色の髪と薄緑色の瞳の背が高い青年にエスコートされながら降りてきた。

栗毛色の青年がご子息のエルトン様だろうか。

二人は父に近づく。エメラルド夫人は膝を曲げてドレスの裾を摘まみ、頭を下げて挨拶をした。

「フィーラ公爵様。ご夫人のシンディ様。ごきげんよう、スゥリエ侯爵の妻のエメラルドと申します。このたびはこちらに来る事をお許しいただきましてありがとうございます。娘のエリカがご令嬢のシェリア様に無礼な態度と発言を致しました事、申し訳なく思っています」

「スゥリエ侯爵夫人。エリカ嬢が娘にしたことは確かに許されるものではないが。まあ、娘と話し合ってみてください。エリカ嬢にはあなたから娘の言葉を伝えてあげればよいと思います」

「…公爵様。ありがとうございます。娘には重々伝えておきます」

エメラルド夫人は曲げていた膝を戻して深々と頭を下げた。兄やわたくしにはご子息が近づいてきた。

「はじめまして。俺はシェリアの兄でトーマス・フィーラと言う。あんたは?」

兄がにこやかに笑いながら自己紹介をする。青年も笑いながら返事をした。

「私はエリカの兄でエルトン・スゥリエと申します。あちらにいる女性はご存知かと思いますが母です」

青年ことエルトン様はそう言ってから兄と握手をした。その後でわたくしにも話しかけてくる。

「えっと。あなたとは初対面だけど。トーマス様の妹さんかな?」

「そうです。トーマスの妹で名をシェリア・フィーラと申します。ちなみにエルトン様の事は存じ上げていますよ」

「え。私の事を知っているのかい?」

「はい。学園に通っていた時になりますけど。女子生徒の間ではスゥリエ家のエルトン様といえば有名でしたから。好青年と評判でした」

わたくしが笑顔で言うとエルトン様は照れた様子で固まってしまった。どうしたのかと思ったら兄が苦笑しながら言う。

「シェリア。そこまでにしておいてやれ。エルトン君は女性に慣れていないみたいだからな」

「…トーマス様。あの私は妹の影響か女性が苦手で。シェリア様、失礼をしました。ご気分を害されていたら謝ります」

「いえ。気にしないでください。エルトン様が女性が苦手だったのならわたくしと母は席を外します。兄と父とお話をしていただけたらそれでいいかと」

「ありがとうございます。そうさせていただけると助かります」

エルトン様はほっとした様子で言った。わたくしは母に目配せをする。向こうもわかってくれたみたいでエメラルド夫人に声をかけた。

「エメラルド様。もしよければ、わたしの部屋にいらしてください。珍しいお菓子を用意しましたの。女同士でおしゃべりをしましょう?」

「あら。珍しいお菓子ですか。わかりました。シェリア様、一緒に行きましょうか」

「ええ。エメラルド様さえよければ参りましょう」

わたくしが頷くと母とエメラルド様の三人で邸に入ったのだった。

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