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28話

スゥリエ侯爵家からわたくし宛に手紙が届いたのはラウル様との婚約期間が二ヶ月を切った真冬の二月頃だった。


メイアからわたくしに手渡された手紙は二通ありまず男性らしい文字で書かれた方を読んだ。

<フィーラ公爵令嬢へ

先日は我が娘のエリカが失礼を致しました。あの後、エリカには妻ときつく叱りつけておきました。

エリカは学園に現在、通っておりその際に先輩にあたる令嬢にあなたの事を聞いたと申しておりました。その令嬢は王太子殿下の婚約者のアリシアーナ様の親戚にあたると聞いています。

アリシアーナ様はその令嬢にフィーラ公爵令嬢の事を悪し様におっしゃっていたとか。エリカから聞いた話だと令嬢はあなたの事をやけに嫌っているとのことでした。

そのためにあなたの事を辱しめてしまったとエリカは申しています。本当に我が娘共々反省しております。

ラウル様にもお詫びしたいと思い、お手紙をお送りしました。では失礼致します。

アストラッド・スゥリエ>

そう書いてあってスゥリエ侯爵の直筆だとわかった。

わたくしはどうしたものかと悩んだ。お返事を書こうにも自分の名で出すのはいかがなものか。

仕方ないので父に相談してみようかと決める。父と母、兄にも話してからお返事を出そうと思った。

もう一通も目を通した。こちらはエメラルド夫人からだった。夫人もエリカ嬢の事で詫びる内容だ。

<シェリア様へ

先日は娘のエリカが失礼を致しました。

まさか、あなたにあんな暴言をするだなんて今でも信じられない心地です。それでも、フィーラ公爵家から何らかの音沙汰があるとは思ってはいますけど。シェリア様はどうお考えでしょうか?

エリカは現在、学園を休んで謹慎しています。わたしたちがきつく叱ったのでかなり堪えているようです。

まあ、反省しているのであればいずれはシェリア様にお詫びの手紙くらいは書かせるつもりです。ラウル様にも夫と同じようにお詫びのお手紙をわたしからもお送りしました。

では、シェリア様には本当にお詫びしたいと思います。エメラルド・スゥリエ>

エメラルド夫人も丁寧で流麗な筆致で書いている。わたくしはさらに考えを巡らせた。

二通のお手紙を家族にも読んでもらおうとも思ったのだった。



夕方になり父と兄が王城から戻ってきた。母と二人で出迎える。

「父様。お帰りなさい」

「ああ、ただいま。シェリアが出迎えてくれるとは珍しいな」

「今日くらいはしようと思いまして。それで父様に折り入って相談したい事があるんです」

「わたしに相談か。何だね?」

父は不思議そうにしながら尋ねてきた。わたくしはさてと考えながら答える。

「その。先日、スゥリエ侯爵邸に行きましたでしょう。そうしたら、侯爵夫妻からお手紙が届きまして。その事について相談したいのです」

「ああ。スゥリエ侯爵夫妻からか。わかった、後で書斎に来なさい。わたしだけでいいかな?」

「父様だけでなく母様や兄様にも同席していただきたいんです。よろしいでしょうか?」

二人に目配せをすると母と兄がわかったらしく頷いてくれた。父も仕方ないなと頷いた。

「…わかった。母様やトーマスにも聞いてもらいたいんだな。じゃあ、夕食が終わったら三人で待っているから来なさい」

父の言葉にわたくしは安心した。ほうと胸を撫で下ろした。

そうして、夕食を家族でとった後で父の書斎に集まったのだった。



父の書斎で集まると母が最初に尋ねてきた。

「シェリア。スゥリエ侯爵邸に行ったと聞いたけど。何があったのか詳しく教えてくれるかしら?」

「わかりました。実は…」

わたくしはスゥリエ侯爵邸に行った時にご令嬢のエリカ嬢から喧嘩を売られた事や頬をぶたれそうになってラウル様に庇われた事を順を追って説明した。

その後、今日になってスゥリエ侯爵夫妻からお詫びのお手紙が届いた事も話した。そこまでを聞くと父が複雑そうな表情をする。

「なるほど。ラウル様がな。まあ、彼が来てくれて良かったかもしれん」

父が言えば母も同意した。

「そうですよ。ラウル様が庇ってくださったからシェリアは無傷で済んだわけですし。エリカ様はやり過ぎです」

「…まあ、シンディの言う通りだな。シェリアに怪我がなくて良かった」

父がそう言った後で侯爵夫妻のお手紙を書斎の執務机に置いた。

「シェリア。これは?」

「スゥリエ侯爵夫妻からのお手紙です。読んでもらおうと思って持ってきました」

「ふうむ。では読んでみよう」

父はそう言って侯爵からのお手紙から読み始めた。次にエメラルド夫人のも読んでふうむと唸り考え込んでしまう。母や兄も目を通した。すると父と同じようになってしまった。

どうしたのだろうと思ったら母が口を開いた。

「…シェリア。エリカ様はあのアリシアーナ様の親戚の娘さんと仲が良いと書いてあるわ。なのにあなたに行くように言うとはね。我ながら馬鹿だわ。ごめんなさいね」

母はため息をつきながら謝ってきた。わたくしはゆるゆると首を横に振りながらいいえと言う。

「母様。もう過ぎた事です。謝らないでください」

「わかったわ。ラウル様には後でわたしからもお詫びのお手紙を書いておくから。あなたもスゥリエ侯爵夫妻にお返事を書きなさい。父様にはわたしから言っておきます」

「うむ。侯爵夫妻にはお前から返事を送ればいい。トーマスも異存はないな?」

父が兄にも確認をとる。

「構いませんよ。シェリアから返事を出すのが妥当でしょう」

兄からも了承をもらったのでわたくしは頷いた。

その後、侯爵夫妻にそれぞれお返事を書いた。侯爵からは一度きりだったがエメラルド夫人からまた、お手紙が届けられた。これには驚いてしまったのだった。

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