表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/44

25話

わたくしは翌日もラウル様を待ち続けた。けど、この日は彼は来なかった。

代わりにラウル様付きの従者が花束と手紙を届けてくる。執事が受け取るとメイアに渡りわたくしの部屋に持ってきた。

「お嬢様。ラウル様から黄薔薇とお手紙が届きましたよ。(とげ)も取り除かれています」

メイアがにこやかに笑いながらわたくしに黄薔薇の花束をよく見えるように近くに持ってきた。右手には封書が握られている。メイアはそれを手渡してくれた。

わたくしは受け取って机にあったペーパーナイフで封を切った。内容を確認する。

<シェリアへ

今日はそちらに行けなくてすまない。実は急な仕事が入って王城に向かわなければならなくなった。

国王陛下からのお呼びだしだから断れないしね。シェリアには今日も会いたかった。

けど、仕事も大事だからな。その代わり、君にお詫びとして我が家の黄薔薇を贈る。

父上と母上が丹誠こめて育てたものだから大事にしてもらえると有難い。

ラウル>

手短かに書いてあって急いでしたためたのがわかる。

わたくしは別にそこまで気を使わなくてもと思う。メイアがほほえましいといった表情でこちらを見つめているのに気づく。わたくしは咳払いをした。

「どうしたの?メイア」

「いえ。すみません。お嬢様が珍しく嬉しそうになさっているものですから。わたしも嬉しくなってしまって」

「…そんなに嬉しそうにしてたかしら。ただ、気を使わなくていいのにと思っただけよ」

「そうでしたか。シェリア様らしいですね」

メイアは余計に目を細めながら笑う。その表情は娘を見る母親のようでわたくしは照れてしまった。

「メイア。お返事を書きたいから準備をして」

照れ隠しのためにメイアに命じる。すぐに彼女は応じてくれた。それでも顔の熱は引かなかった。黄薔薇は後で花瓶に活けられたのだった。



ラウル様に返事を出した。あまり気を使わなくてもいい、お仕事を優先するのは当たり前だという内容にしておいた。彼がどう受け取るのかはわからないけど。部屋には朝方に贈られた黄薔薇の花の香りで満ちていた。

ドアがノックされてメイアが応対する。入ってきたのは母だった。

「シェリア。少しいいかしら?」

「はい。なんでしょうか、母様」

「…今日はラウル様は来られなかったみたいね」

母は意味深に告げた。それにわたくしは頷いた。

「ええ。確かにラウル様はいらしてませんけど。それがどうかなさいましたか?」

「…シェリア。ラウル様の事でちょっと噂を小耳に挟んだのよ。昨日のお昼にスゥリエ侯爵夫人のお茶会にお呼ばれしていてね。スゥリエ夫人、お名前をエメラルド様というのだけど。何でも陛下がラウル様に縁談を持ってきたとかでね」

わたくしは耳を疑った。

「母様。ラウル様に縁談って。それは本当なんですか?」

「本当らしいわよ。けど、ラウル様は速攻にお断りになったと夫君の侯爵から聞いたとエメラルド様は言っていたわ」

母の言葉にわたくしはほっとした。まだ、正式に結婚はしていないのでラウル様がお断りになった事が嬉しくはある。けど、何故今になって陛下は縁談を持ってきたのだろう?

わたくしは首を捻って考え込んでしまったのだった。


母はその後、詳しい説明をしてくれた。

何でもエメラルド様にはわたくしより三歳下の年頃のご令嬢がいるらしい。つまりは十六歳くらいの年齢ということになる。名前をエリカ嬢といい、ラウル様をことのほか気に入っているそうだ。彼女は常々、ラウル様と結婚したいと父君のスゥリエ侯爵に言っていた。

だが、わたくしーシェリア・フィーラ公爵令嬢がいるために父君は反対していた。なのでエリカ嬢は最終手段として母君のエメラルド様のツテを使う事にする。国王陛下に近しい人物で女官長がエメラルド様の姉君になるらしく手紙を送った。

ラウル様はかつて王立学園で王太子に婚約破棄され、悪役令嬢と噂されたフィーラ公爵令嬢に騙されていると。あんな悪女にたぶらかされているラウル様の目を覚ますためにも陛下に自分との縁談をお勧めしてほしいとつづった。これを読んだ女官長は陛下に進言した。ラウル様とフィーラ公爵令嬢との婚約は解消させるべきだ。代わりにエリカ・スゥリエ侯爵令嬢と婚約したらよいとも。

陛下はそれを聞いて呆れ返ったらしい。今さら、もう遅いと一蹴なさったとか。

それでもしつこく女官長が食い下がるので陛下は仕方なくラウル様本人に言うだけは言うがどうなっても知らないとおっしゃった。そうして、本人に勧めてみたら案の定断られた…。

母はそこまで話すと手に持っていた扇をみしみしと音を立てながら握りしめる。

「まったく、わたくし(はらわた)が煮えくり返りそうになったわ。シェリアのどこに落ち度があるというのかしら!あんのバカ娘にシェリアの苦労がわかるわけないわ」

母は憤慨しながら扇を持つ手にさらに力を込めた。

「仕方ない。シェリア、あなた近い内にスゥリエ侯爵家に行きなさい。エリカ嬢に会わせてもらって話をしてきたらいいわ。ラウル様は浮気をなさる方じゃないとお灸を据えてきてくれたらわたくしも大助かりなのだけど」

「わかりました。エリカ様に直接お話してきます。ラウル様にも連絡をしておきますね」

「…そうね。でもあなた一人だけだと心配だから。メイアも連れていきなさい」

はあと言いながらとりあえずは頷いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ