18話
わたくしは遅めの時間に目を覚ました。メイアの声で起き上がるもくらりと目眩がする。どうしたのだろうと思っていたら顔や体が熱い。どうも、熱が出たようだ。
わたくしは何とかベッドから降りようとするが。また、目眩が出たせいで足元がふらついた。
「…お嬢様?!」
メイアが驚いたらしく慌てて駆け寄ってくる。
「失礼しますね。おでこを触らせていただきます」
そう言いながら額に触れてきたメイアの手はひんやりとしていて心地良かった。そう思っていたら彼女は手を離してこう言ってくる。
「お嬢様。これはいけません。だいぶ、高熱が出ています。今日は寝室でお休みください」
「…けど。ラウル様が」
「なりません。お医者様を呼びますからベッドで安静になさってください」
仕方なくわたくしは言われた通りに再びベッドに横になった。メイアは少しお待ちくださいと言って寝室を出て行った。
「ふむ。これは疲労と心労による熱ですな。たぶん、看病をなさっていたりしたから疲れが出たのでしょう」
医師はわたくしの診察を終えてからそう結果を告げた。メイアは神妙な顔でそうですかと呟いた。
「…何、ゆっくりと休んで栄養をちゃんと取れば治りますよ。疲労回復の薬と解熱剤を出しておきます。それを飲んで様子を見てください。まあ、二、三日もすれば熱も下がるでしょうな」
「わかりました。今日はお忙しい中、ありがとうございました」
メイアがお礼を言うと医師はにこやかに笑う。では失礼しますと言って医師は鞄を手に持って部屋を去って行った。
メイアと共にそれを見送ったのだった。
その後、わたくしは消化に良いスープや麦粥などを食べて過ごした。苦い丸薬である疲労回復の薬を一日に食後三回飲んだ。
メイアが飲んだ後でくれる甘いキャンデイ目当てに飲む毎日だった。三日もすると熱も下がり微熱という状態になる。兄のトーマスや父母も一日に一度は様子を見に来てくれていたので退屈はしなかった。
驚くべきことに元婚約者のエリック殿下からもお見舞いの品が届いた。これにはメイアも難色を示した。
「…お嬢様。この品はどなたからですか?」
無表情で問いかけられてわたくしは戸惑う。それでも何とか答えた。
「えっと。エリック殿下からよ。何か、お妃のエルジェベータ様から聞いたとお手紙にあったわ」
「エリック殿下からですか。わかりました、私が責任を持って送り返しておきます」
「どうして?」
わたくしが意味がわからないという風に問い返すとメイアはふうと息をついた。
「よいですかお嬢様。エリック殿下はあなたを見捨てて一度はアリシアーナ様を選んだ方ですよ。それをお忘れになりましたか?」
「…そうだったわね。殿下は一度はわたくしを裏切っていたわね。メイアはそれを言いたかったの」
「そうです。だから、いくらご正妃様からお聞きになられていたとしても品をお送りになられる道理はありません。むしろ、こちらから受け取る筋合いではないと申し上げるべきです。不敬罪に問われようが構いません」
それはやり過ぎじゃないかと思ったけど。わたくしはメイアにお手紙を書く用意をするように頼んだ。
とりあえず、お手紙には品を送っていただいたお礼とエルジェベータ様への感謝の言葉、後は殿下からのお見舞いの品は受け取れそうにないとだけ綴っておいた。
書き終えるとメイアは封蝋を押して王宮に届ける準備をしてくれる。そうして、手紙は送り届けられたのだった。




