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16話

わたくしが目を覚ました時、側には何故かラウル様がいた。金の髪と淡い水色の瞳が見えてこれは夢なのかと思う。

「…ラウル様。おられるという事は夢なのかしら。それとも、現実なの?」

わたくしはそう言いながら目だけを動かす。天井が目に入るという事とフワフワとしたクッションの感触が頭の辺りにする事からベットに寝かされている事がわかった。

「…シェリア。トーマスから君が倒れたと聞いた。急いで戻ってきたんだが」

そう言いながらラウル様はわたくしの髪を撫でてきた。ラウル様の手は剣だこがあってざらりとしているけど。温かい手だった。

「そうだったんですか。じゃあ、これは現実ね」

「シェリア。まあ、現実ではあるよ。けど、倒れたと聞いた時は仰天した。一体何があったんだい?」

「…それは。黄薔薇の花を見たら気分が悪くなってしまって。でも、花には罪はないのはわかっているんです。ただ、ラウル様がそれで怪我をなさったのを思い出してしまったというか」

そこまで言うとラウル様は沈痛な表情をした。

「…なるほど。それで気分が悪くなったと。じゃあ、今日は無理をせずに休んだ方が良い」

「そうします。では邸にもう帰ります」

「そうすると良いよ。見送りはするから」

「ありがとうございます」

そんなやりとりをした後、わたくしはベットから出る。けど、まだ目眩がして歩くのもままならなかった。見かねたラウル様がとっさにわたくしの腕を掴んで支えてくれた。

「おっと。危ない、まだ目が覚めたばかりだからな。仕方ない、私が馬車まで運ぼう」

そう言ってわたくしの背中と膝に手を差し入れて横抱きに抱え上げる。ぐんとラウル様の顔が近くなって心臓がはねた。

赤くなっているだろう顔を隠せないままで二人して部屋を出たのであった。




一階まで階段を降りる時も玄関ホールでもずっとわたくしはラウル様に抱えられた状態でいた。兄は驚いた表情でこちらを見てきた。

「な。シェリア、大丈夫なのか?」

「…あの。もう意識はあるのですけど。まだ、足元が覚束なくて」

「そうか。すまないな、ラウル。うちの妹が迷惑かけて」

兄が謝るもラウル様は首を横に振って良いやと言った。

「謝らなくていい。シェリアが重病じゃなくて良かったよ。迷惑だなんて思ってないから気にしなくていいよ」

「まあ、それもそうだな。じゃあ、シェリア。帰るとするか」

「ええ。ではラウル様。わたくし、帰りますので。降ろしていただけますか?」

わたくしはそう言ってラウル様の目を見た。けど、ラウル様は駄目だと言う。

「言っただろう。馬車まで運ぶと。トーマス、彼女を連れて行くから御者に伝えてくれ」

「わかったよ。今から伝えてくる」

そう言って兄は外へ出て行った。わたくしは仕方なくラウル様の首に回していた腕を外すこと無くそのままの状態で待った。

少し経ってから兄が戻ってきた。御者に伝えてきたと言ってラウル様に馬車まで来るように促してくる。兄を先頭にして三人で馬車まで歩く。といってもわたくしは抱えられているから実際は違うのだけど。

御者が扉を開けて待機していてくれた。兄が先に乗り込むとラウル様も乗り込んだ。このまま、席に降ろしてくれるのだと思ったけどどうやら違うらしい。何と、彼はわたくしを抱えたままで座席に座ったのだ。

そして自分の膝の上にわたくしを乗せた。さすがに不安定な体勢だったのでもう一度降ろしてほしいと言ったけど聞き入れてはもらえなかった。兄が仕方ないと言わんばかりに御者に出発するように言った。恥ずかしさのあまり、体を縮こまらせたわたくしだった。

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