13話
わたくしは昼食を軽くとった。メイアにお説教をしたから部屋には誰もいない。一人でナイフとフォークを使いながら鮭のムニエルを口に運ぶ。
パンをちぎって食べたが。一人だけでは味気なく感じる。それでも、黙々と食事を続けた結果、出されたものは一通り食べてしまう。きっと、作った料理長は驚くだろうな。
そんな事を思いながら廊下に向けて声をかける。多分、侍女の誰かはいるはずだ。
「…誰かいませんか?」
大きめの声で呼びかけるとドアが静かに開いた。入ってきたのはメイアだった。
「お嬢様。いかがなさいました?」
「ああ、メイア。お食事が終わったから下げてくれないかしら」
「わかりました」
メイアは頷くと部屋に置いてあったワゴンを押してわたくしの近くまで来る。手際よく食器やナイフなどを片付けてワゴンに置いていった。
そうして、ドアを器用に開けて出ていく。それを見送りながらふうと息をついたのだった。
夕食が終わりメイアは再び部屋に戻ってきた。両手にはポットやカップがのったお盆を持っている。
どうしたのだろうと思うとメイアはそれを机に置いてお茶の準備を始めた。ポットの中にはお湯が入っているようで茶葉を茶漉しに入れてカップに取り付けてから注いだ。
ふんわりと花の香りがしてハーブティーだと分かる。メイアはお湯を注ぎ終えるとしばらく蓋をして蒸らしたらしい。
「…少しお待ちくださいね。この茶葉はラベリルという花で葉と共に乾燥させたものです。これを煎じて飲むと気持ちを落ち着かせてくれるそうです。お嬢様には良いと思いまして」
「そう。メイアがハーブティーを入れてきれるなんて珍しいわね」
「わたしだってハーブティーを入れたくなる時はあります。今日はお嬢様もお疲れのようでしたから」
メイアはわたくしの今の状態をずばりと言い当ててみせた。それに驚いてしまう。
「どうしてわかったの?」
「そりゃあ、わたしはお嬢様のお小さい頃からお仕えしていますから。今、どういう状態でいらっしゃるかくらいはわかります」
「…そう。メイアには勝てそうにないわね。でも、ありがとう」
お礼を言うとメイアは気にしないでくださいと言ったのだった。
その後、ラベリルのハーブティーを二人で飲みながらゆっくりと語らった。メイアも最初は遠慮していたが。
わたくしが押し切ると奥様方には内緒ですよと言って付き合ってくれた。
「お嬢様。こうやってお話をするのは久しぶりですね」
「本当ね。最近はラウル様の怪我なんかで忙しかったから。お茶を飲む時間も惜しかったわ」
「そうですね。ラウル様が薔薇の棘がたくさん手に刺さってしまわれて。わたしも聞いた時は驚きました」
メイアは頷きながらそう答えた。わたくしもそうだったわねと頷いた。
「お嬢様も心配そうになさっていましたから。ラウル様には危うくあんの若造めと文句を言いたくなりましたよ。まあ、怪我が治って良かったですけど」
「…メイア。さっき、聞き捨てならない事を耳にしたような気がするのだけど」
「あはは。お嬢様、気のせいですよ。わたしがラウル様に悪口を言うわけがないでしょう」
「まあ、気にしたって仕方ないか。メイア。今日はハーブティーをありがとう。ごちそうさま」
「こちらこそ。お嬢様、もう遅い時間ですから。お休みください」
わかったわと言ってわたくしは立ち上がった。寝室へと向かう。既に夜着に着替えていたのでそのままでベットに潜った。深い眠りについたのだった。




