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冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?

冤罪で追放された悪役令嬢ですが、廃ダンジョンをドールハウス感覚でリフォームして引きこもります。え? 配信? 何それ美味しいの? (2)

作者: 伊部 なら丁 with Gemini3
掲載日:2026/02/15

【冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?】シリーズ No.2

「新作、出るんだ……」


朝の優雅なティータイムが一変した。私の手元にあるのは、ダンジョンの空間投影ディスプレイに映し出されたECサイトのページ。そこには、真紅のベルベットドレスを纏った限定ブライス、「ミッドナイト・ベルベット」が鎮座していた。美しい。尊い。喉から手が出るほど欲しい。しかし、今の私には致命的な欠陥があった。先日の「ドールハウス拡張・温泉リフォーム」で、予算を使いすぎてしまったのだ。


金欠、到来。


貯蓄はあるが、生活防衛資金には手をつけたくない。そこで私の脳内で、悪魔的な閃きが走る。「そうだ、配信よ!」これだけ完璧なドールハウスと、私の可愛いブライスたち。これを紹介する専門チャンネルを開設すれば、世界中のドールマニアや、趣味の合うセレブなお友達が殺到し、スパチャ(投げ銭)の嵐になるに違いない。私はニヤリと笑った。これで新作購入資金も、私の老後も安泰だ。


皮算用、完璧。


早速、「ブライスと私〜ダンジョンからの癒し〜」というチャンネルを開設し、配信スタート。私はルミナス・ドリームを手に、渾身の愛想笑いで語りかける。「皆さんごきげんよう。今日はこの子の瞳の深淵について……」しかし、現実は非情だった。視聴者数、3人。コメント欄は「王太子殿下、こっち見て!」「国に帰って!」というノイズばかり。肝心のマニアはどこ? スパチャは? 画面の向こうの無関心さに、私のこめかみに青筋が浮かぶ。


過疎、確定。


「キーッ! 何よこれ! 私のブライスの可愛さが分からないなんて、美的センスが死滅してるんじゃない!?」配信を切った瞬間、私はクッションに顔を埋めて叫んだ。もういい。期待した私が馬鹿だった。こんな数字に一喜一憂するなんて、私の優雅なスローライフには相応しくない。私は乱れた髪を払い、気持ちを切り替えることにした。「ふん、所詮は下民に高尚な趣味は理解できないのよ」。


精神勝利、完了。


気晴らしには土いじりが一番だ。私は裏庭の菜園へと向かう。トマトの次は、デザート系で攻めよう。「イチゴ狩りキット」を展開。私のスキルにかかれば、苗を植えた瞬間に白い花が咲き、数分後には宝石のような大粒のイチゴ「あまおう改」が鈴なりになる。甘い香りが鼻孔をくすぐる。私は一つ摘んで口に放り込む。濃厚な甘さと程よい酸味。やっぱり、裏切らないのは植物と食欲だけだ。


自家栽培、最強。


採れたてのイチゴを山盛りにし、ソファでダラダラと他の配信をザッピングする。すると、ランキング上位に理解不能な映像が。「ガンプラ作成配信」? 画面の中では、男たちがプラスチックのロボットを組み立てて盛り上がっている。「何これ、ただのプラモデルじゃない。子供の男の子の趣味でしょ? 何が楽しいのよ」。私は呆れてため息をつく。油と接着剤の匂いがしそうな世界。私の煌びやかなドールとは対極にある。


理解不能な男心。


けれど、ふと思い出した。そういえば、実家の兄もこんなのを部屋に積み上げていたっけ。「合わせ目消しがどうとか」「塗装がどうとか」ブツブツ言っていた姿が脳裏をよぎる。……待てよ? これだけ人気があるなら、ここに「金脈」があるんじゃない? 私はイチゴを齧りながら、邪悪な笑みを浮かべる。別にガチで作る必要はない。むしろ、初心者の私が一生懸命やることに価値があるのでは?


あざとさ、全開。


善は急げだ。私は通販で適当な「主役機っぽいガンプラ」を取り寄せる。そして配信再開。タイトルは『【初見】女の子が初めてガンプラ作ってみた♡』。あざとい。我ながら反吐が出るほどあざとい。しかし、背に腹は変えられない。私は箱を開け、ランナー(枠)を不思議そうに見つめる演技をする。「えぇ〜、これどうやって切るのぉ? 部品多くて分かんな〜い」。


演技力、アカデミー賞級。


ニッパー(100均相当)でパチパチとパーツを切るだけの作業。ゲート処理? ヤスリがけ? 知らないわよそんなの。ただ説明書通りにハメていくだけ。時折、「あっ、固い……入らないよぉ〜」と困った顔でカメラを見つめる。するとどうだ。コメント欄が爆速で流れ始めた。「頑張れ!」「そこは向きが違うよ!」「俺が教えてあげたい!」……そして鳴り止まないスパチャの通知音。


チョロすぎて、草。


「わぁ、○○さん、スパチャありがとうございますぅ! 応援のおかげで腕がつきましたぁ!」内心で舌を出しながら、私はひたすらパチ組み(塗装なし)のガンダムもどきを完成させていく。視聴者数はブライス配信の百倍。兄が見たら卒倒するだろうが、今の私は「ドジっ子モデラー」だ。王太子の騎士団が月給で稼ぐ額が、わずか一時間で私の懐に入ってくる。


錬金術、成功。


配信終了後。私の手元には完成したガンプラと、莫大な投げ銭の残高があった。私はガンプラをフェンリルのおもちゃとして放り投げ(彼は嬉しそうに噛み砕いた)、即座にECサイトを開く。「カートに入れる」「購入確定」。数タップで、あのミッドナイト・ベルベットが私のものになった。


大人買い、最高。


「ありがとう、名も知らぬお兄様方。あなたたちの夢と希望は、私の人形ドールに変わったわ」。私は届くのが待ちきれなくて、フェンリルの背中で小躍りする。チョロい世界、チョロい男たち。やっぱりこのダンジョン生活、やめられない。次は「初めてのゲーミングPC自作」でもやってやろうかしら。


搾取こそ、正義。


王城の作戦会議室は、異様な熱気に包まれていた。

大型スクリーンに映し出されているのは、私の「ドジっ子ガンプラ配信」だ。私が「わぁ、パーツが小さすぎて見えな〜い♡」とあざとくニッパーを握るたび、騎士団員たちの頬が紅潮する。しかし、元婚約者の王太子だけは、血走った目で画面の隅を凝視していた。


「そこだ、そこで一時停止!」


彼の指差した先。それは私がパーツを落とした時に偶然映り込んだ、床のフローリングの隙間。そこから微かに覗く、青黒い岩肌。「間違いない……この岩盤の質、そして背後に見えるあの不自然なほど輝く観葉植物(ドールハウス用照明)。これは王都の地下数百メートル、古代遺跡エリアの『第3層』だ!」


特定班、優秀すぎ。


「あんな危険地帯に……! しかし、奴は今、プラスチックの塊を組み立てるのに夢中だ。しかも『パーツが見当たらない』と混乱している。今こそ好機! 全軍、突入せよ!」王太子の号令が飛ぶ。画面の向こうの私は、確かに説明書を逆さまに持って「これ、設計ミスじゃない?」と首を傾げている真っ最中だ。彼らにとって、私は完全に隙だらけの獲物に見えたに違いない。


油断大敵、馬鹿を見る。


その頃、ダンジョン内。私は配信を終え、スパチャの集計作業に入っていた。「うわ、今日の収益だけで城壁の修理費くらい稼いじゃったかも」。ホクホク顔で画面をスクロールしていると、フェンリルが突然、ソファからむくりと起き上がった。耳をピクピクと動かし、玄関の方をじっと見つめている。


「ん? どうしたの? またおトイレ?」


私が尋ねると、彼は「グルル(ちょっと虫の羽音がうるさい)」と低く喉を鳴らした。どうやら、外に「お邪魔虫」たちが到着したらしい。私は組み立て途中のガンダム(腕なし)をテーブルに置き、優しく彼に微笑みかける。「いいよ、行っておいで。でも、あんまり激しく遊んじゃダメだから音。埃が立つから」。


番犬、出動。


重厚な鉄の扉の外には、王太子ご自慢の近衛騎士団、そして配信を見て「聖地巡礼」に来てしまった興奮状態の冒険者たちがひしめいていた。「あそこだ! あの扉の向こうに『ドジっ子モデラーちゃん』がいるぞ!」「確保しろ! いや、まずはサインだ!」欲望と殺意が入り混じるカオス。彼らが扉に手をかけようとした、その時だ。


扉が、開いた。


中から現れたのは、美少女でもガンダムでもない。巨大な銀色の山。伝説の魔獣フェンリルだ。彼は侵入者たちを見下ろし、まるで自分のテリトリーに迷い込んだ小さな羽虫を見るような目を向けた。騎士たちが恐怖で凍りつく中、フェンリルはゆっくりと後ろ足を持ち上げた。


攻撃態勢……?


いや、違う。彼はただ、首の後ろが痒かっただけだ。

巨大な後ろ足が、猛烈な勢いで首筋を掻き始める。「カイカイカイカイ!」

その瞬間、強烈な摩擦熱と衝撃波が発生した。


ドガガガガガッ!!

「うわあああああ!」

「地震だあああ!」

「衝撃で鎧がバラバラに!?」


ただの「耳の後ろ掻き」が、局地的な震度7とソニックブームを引き起こす。発生した竜巻のような風圧に、騎士も冒険者も、剣も魔法も、全てが木の葉のように吹き飛ばされていく。彼らは悲鳴を上げる間もなく、ダンジョンの入り口から遥か彼方、地上へ向かって射出された。


カイカイ一発、壊滅。


数分後。静寂を取り戻した廊下に、フェンリルが戻ってくる。スッキリした顔で、どこか満足げだ。「おかえり。早かったわね、スッキリした?」私が声をかけると、彼は「クゥ〜ン(痒いとこ治った)」と甘えた声を出して、私の足元にすり寄ってくる。


圧倒的、平和。


「よしよし、いい子だね」。私は彼のふわふわの頭を撫で回し、ご褒美に先ほど完成したガンプラの余剰パーツ(ポリキャップ)を指で弾いて遊んであげる。フェンリルはそれを嬉しそうに目で追い、前足でチョイチョイとじゃれついた。

外では、空から降ってきた騎士団の鎧が王都の広場に降り注ぎ、王太子が「またかあああ!」と絶叫している頃だろう。けれど、そんな騒音は、この防音完備の地下室には届かない。私は紅茶を一口すすり、次のブライスの洋服カタログを開く。

「さて、次はどの子をお迎えしようかな」

私の優雅なダンジョンライフは、誰にも、何にも、邪魔させるつもりはない。最強の番犬と、最強の趣味がある限り。


今日も、勝確かちかく


最後まで読んで頂きありがとうございます。


【冤罪で追放された悪役令嬢ですが、え? 配信? 何それ美味しいの?】シリーズ 展開中です。続きあります!


宜しくお願い致します。


伊部 拝(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)ペコリ

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