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第6章 24H Nürburgring 39

「そのすぐ後ろに、なんの因縁かウィングタイガーのウラカンがつけています。選手はDragon選手。自らのミスで順位を落としてしまいましたが、この最後の走りでどのような走りを見せるのでしょうか!」

 と夜香楠が継いで実況した。

 コースインしたKTM X-Bow GT2は、最初からハイペースで飛ばした。バックマーカーをかわしつつ、最初のGPコースを駆け抜けてゆく。

 ランボルギーニ・ウラカンは、そのすぐ後ろにつけているが、すぐには仕掛けない。シューティングゲームのオプション状態で、追走する。

 GPコースを駆け抜ける間に、カースティと雄平は控え室に戻り。拍手で出迎えられた。それぞれこのレース最後の走りで、自分の仕事を果たした。

「ウラカンはどんな感じっすかね」

 雄平は画面を見据えて言った。

「まあ、周回遅れだしな。無理に抜こうとしてなんかあったらペナルティー食らうのは、あいつも重々承知してっから、今は仕掛けないだろうな」

 優は自分の予測を語る。確かにあのDragonがペナルティーおかまいなく仕掛けるとは思えなかったし。その通り、追走状態でGPコースを抜け、ノルトシュライフェに入る。

「じっくりストーキングし、レース終盤にチャンスを見つけて仕掛ける。そう来るかもしれないな」

 とアンディは語り。俊哉も頷く。

「まあ抜かれても問題ないんで、行かれたなら行かせりゃいいんだが……」

「まあ、すんなりとはいかんでしょうねえ」

「かもな……」

 ヤーナを疑うことになるが、もしかしたらあるかもしれないという前提でゴールまでのことを考えざるを得なかった。

「あ、抜いたらまた1周走らなきゃいけないんだっけ。じゃあ後ろに張り付いた状態でゴールした方が楽じゃん」

 ソキョンははたとそのことに気付いた。他の面々はそりゃそうだけどと苦笑する。

 たとえそれを承知でX-Bowを抜いたとしても、龍一の契約満了は覆らないのだ。それならそうした方が得と言えば得で、楽なのだが。

「そうならないと思うよ」

 カースティは笑顔で言う。

「魔法をかけたからね」

「魔法……?」

 フィチは不思議そうにする。アイリーンはくすりと笑う。

「Violet Girlのハグは魔法のハグってわけね」

「まあね」

「なんじゃそりゃ」

 カースティは得意げに笑みを見せ。ソキョンは苦笑する。優佳ら他のクルーは好もしげに微笑んだ。

「まあ確かに、あいつの馬鹿真面目さを考えたら、魔法も効くかもね」

 ソキョンはぽそっとつぶやいた。

 ニュルブルクリンクを周回し、メインストレートに戻って来た。X-Bowとウラカンの差はやや開いたか。車一台分くらいは。

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