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第6章 24H Nürburgring 37

 2位との差は十分開いているし、縮められていないので、変に気にする必要はないだろう。大きなミスさえしなければ。もしウィングタイガーのウラカンに追いつかれても、行かせたらいい。一応、ヤーナにそのことは言って、うんと頷きはしたが。

「くそ、なんだよ!」

 雄平の嫌な声。画面を見てチームの面々もまずそうな面持ちをする。

 場所はバンクのある左ヘアピンの、カラツィオラ・カルッセル(Caracciola Karussell)。

 一台のスポーツプロダクションカテゴリーのマシンに引っ掛かっている。それが、バグなのかどうか、素直に譲らないのだ。それこそ止まりそうなほど速度も落ちる有様。

 バックマーカーとなったマシンはすぐに譲るようプログラミングされているはずだが。それも完全ではかったか。

 ヘアピンを抜けてしばらくは、邪魔をされて。ペースダウンを余儀なくされた。

「くそ! 運営に抗議するか?」

 俊哉は歯噛みして言う。

「いや無駄だ。抗議したところで、AIカーがペナルティを受けるだけだ」

「あ、BANされたようだ!」

 レッドブレイドのX-Bowを妨害していたAIカーは、あまりにも悪質だったからか、ふっと消えた。直後に優のチームスマホに電話がかかってきて、出てみれば、運営からのお詫びだった。

 優は余計なことは言わず、苦笑しつつ配慮に謝意を伝えた。

 これにてペースを取り戻したが。ウィングタイガーのウラカンとのコース上の差は、あろうことか相当縮んだ。

「あッ!」

 カースティが嬉しそうな声をあげる。視界にとらえたのだ、レッドブレイドのX-Bowを。

 まだ点だが、ここから迫るのだ。

「おい、これ」

「抜かれるかもしれないな……」

 さすがのアンディも固唾を飲んで見守るしかなかった。

「なんだ?」

 何か気配を感じ、ミラーを一瞬覗いた。

「まさか……」

 楔形ボディの、ランボルギーニ・ウラカンっぽい、しかもウィングタイガーの、が見えたような気がした。

「ウィングタイガーのウラカンが見えたような気がするんですが、見間違いっすかね?」

「いや、見間違いじゃない。その通りだ」

「今Violet Girlですよね」

「そうだ」

「……、じゃあ来られるかもしれないですね」

 悔しさが声に滲む。

「追いつかれても、無理せず行かせろ」

「わかりました」

 レッドブレイドの控え室に緊張が走った。と同時に龍一のミスにいたく感謝するのだった。

 雄平も、言うまでもなく精一杯走った。しかしカースティの走りはそれを余裕で上回っていた。

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