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第6章 24H Nürburgring 34

 時間は午前10時を回った。

 以後の展開は、大きな動きはなかった。下位の方で、AIカーやプレイヤーカーがミス、クラッシュをし、順位を下げたり。最悪のリタイヤというのも1台あった。

 そんな感じで、午前11時か近づく。

 レッドブレイドX-Bowとウィングタイガーのウラカンのコース上の差は、50秒ちょっとまで縮まっていた。俊哉のプレッシャーでガチガチな様は、推して知るべきであった。

「じゃ行ってくるね~」

 カースティはまるでピクニックに行くかのような気軽さで会場に向かった。その姿は、生まれながらのゲーマーだった。大好きを越えてゲームとリンクし、緊張など微塵も感じさせなかった。

「よし、行ってきます!」

 と雄平は気持ちを込めて会場へ向かった。

 X-Bowがピットイン。

「すまねえ。頼んだぞ」

「任せろ!」

 軽くやり取りをし、雄平はシムリグに身を預け。ピット作業が終わり、コースイン。

 ややあって、ウラカンがピットイン。

「Good luck!」

「OK!」

 これも短くやり取りをし、カースティはシムリグにスタンバイし。ピット作業を終え、コースイン。

 コースインして、ソキョンから連絡。

「後ろからAIカーがいい感じで迫ってるから、気を付けて」

「わかったわ!」

 X-Bowを追う一方で、後ろからAIカーのダッヂ・ヴァイパーGTS-Rとベントレー・コンチネンタルが迫っているのもわかっていた。さてこの2台、追いつくかどうか。

 ともあれ、これにて俊哉とアイリーンの走りは終わった。後はチームメイトと運に託した。

 時間は午前11時を回った。

「さあ、行くよ!」

 カースティの瞳が光った。

 控え室に戻った俊哉は拍手で出迎えられ、ねぎらわれた。

「あー、オレなめてました。プロの世界ってすごいっすね」

「まあよくやってくれた。お疲れさん」

 優は俊哉の肩を軽く叩いてねぎらった。

 アイリーンも同じく、クルーに暖かく出迎えられた。

「自分なりに精一杯頑張ったけど。まだまだね。上っても上っても、上り切れない世界ね、ここは」

 と自分の役目を終えた安堵のため息とともに、この言葉も吐露した。

 ソキョンたちは笑顔で頷いた。

 だから、いいんじゃないかと。

「まあ、彼女はそのまま大気圏突破しそうだね」

 画面を観ながらフィチは諧謔を込めて言う。カースティのことだった。

 画面で見るカースティの走りは、冴え渡っていた。バックマーカーもひょひょいのひょいとかわしてゆく。

「……おい」

 優ははっとする。

「ウィングタイガーのウラカン、良い感じで走ってるじゃないか」

「そうね、だから?」

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