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第6章 24H Nürburgring 31

「望みはバックマーカーね。それがうまいことX-Bowを邪魔してくれたらいいけど」

 アイリーンは画面を見てつぶやく。もっともそのリスクはこっちも同じなのだが。

 X-Bowとウラカンはほぼ同じペースで走っている。

 ひとつ前の7位とは3分差。1位から7位までは数分おきの差が開いて。1位と同一周回なのはその7位までだった。その7位も、何かあれば周回遅れになってしまうが、おめおめと遅いペースで走ってくれるわけもなく。

 そこはやはりプロなので、いいペースで走って意地を見せていた。

 アイリーンのスマホにメールが入る。アレクサンドラからだった。午前中はホテルで休んで、ショーンとマルタとで気晴らしの外出をし、午後2時ごろにはビル入りするという旨が書かれていた。

 読み終えて、OKと返信した。

「まさにKingの威厳ある走り! レッドブレイドのKing sword選手、またもファーステストタイムを叩き出しました!」

 風画流が感服しきりに実況する。

 しばらくして、

「ウィングタイガーのSpiral K選手、King sword選手に次ぐベストタイム! 痛恨のミスで順位を下げたものの、こちらも意地を見せます!」

 と夜香楠が実況する。

 時間は刻々と進み。ピットインのタイミングが迫ってくる。アイリーンはクルーに見送られて会場へ向かい、俊哉も同じく向かう。

(引き離されないのがやっとか!)

 フィチは忸怩たる思いだった。せめて2分以内に入りたかったのだが、それはかなわなかった。と思われたが。

 夜香楠が叫ぶように言う。

「ああっと、クラッシュです。なんと1位のレッドブレイドのX-Bowの目前で!」

「目前でクラッシュしたバックマーカーのマシンが道を塞いでしまい、レッドブレイドX-Bow、ペースダウンを余儀なくされます!」

 風画流が継いで言った。

 これにより、差が一気に縮まった。場所はコッテンボーン(Kottenborn)という。難所で知られるフルックプラッツ(Flugplatz)の手前だ。グリーンの幅は狭くすぐガードレール。操作をミスしコースアウト、ガードレール接触、そこから跳ね返って道を塞いでしまう、という流れだった。

「なんとまあ」

 都合のいい。しかしこれはまさに天祐! とソキョンは拳を握り締め、思わずガッツポーズ。

「くそ!」

 アンディは悔しそうに吐き捨てる。目前でクラッシュされ道を塞がれるなど、これほど苛立たせられることもない。

 道を塞ぐマシンを避けるため減速を余儀なくされた。そのマシンも、どうにか動いて道を空けた。

 しばらくしてそこをウラカンが走りぬけてゆく。


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