第6章 24H Nürburgring 29
朝になって空模様もすっかり変わり、青空となり、雲は思い思いの姿で空を泳いでいた。
「よく頑張ったね!」
「なんとかね!」
AIもピットインをする。ウラカンとヴァイパーは同じタイミングでピットインし。同時にピットアウトした。
控え室に戻った龍一を、クルーは笑顔で出迎えた。
「まあ、お疲れさん」
とソキョンはエナジードリンクを差し出した。レッドブレイドのスポンサーであるゾンネエナジーだ。おすそ分けしてもらったのだった。
「ありがとうございます」
龍一はお辞儀しながら缶を受け取り、軽く喉に流し込んだ。
それからフィチはヴァイパーをガンガンに煽り倒し、ノルトシュライフェに入る手前で華麗にパスし。ウィングタイガーは8位になった。画面でその様子を見ていたクルーは、おおーと声をあげた。
夜香楠が実況する。
「トップはレッドブレイドのKTM X-Bow GT2。ドライブするのはKing sword選手です! 好タイムで快走、その名にふさわしい走りを見せています!」
風画流が話を継ぐ。
「トップを走りながら痛恨のコースアウトで順位を落としたウィングタイガーのランボルギーニ・ウラカンですが、Spiral K選手ついにAIカーのダッヂ・ヴァイパーGTS-Rをパスし、8位に順位を上げました」
この時間になれば実況Vチューバ―もふたりそろってとなっていた。
2階中ホールにも観客が戻ってきた。
「……」
ソキョンはふと閃くものがあり、
「ねえ、みんな」
と考えを話した。
その間に、
「おーっとッ! ここでKing sword選手がファーステストタイムを叩き出しました!」
「守りに入らず、限界突破に挑むレッドブレイドのX-Bowの速さにはただただ驚かされます!」
と、風画流と夜香楠が実況する。
「まったくすごいですねえ……」
優佳は驚き思わずつぶやく。龍一のミスからトップに立って、それからずっとトップを走っているのだ。
「それよ、まさにそれ!」
優佳の言葉を受けて、ソキョンは言う。
「責任は私が持つわ。だから、ガンガンに攻めて!」
「攻めるんですか!?」
クルーは驚いた面持ちを見せた。
「そう、考え直したのよ。あんたらの顔見て」
「え?」
龍一にアイリーン、カースティは苦笑する。
「本当は、攻めたいんでしょう」
「ええ、まあ」
龍一は苦笑する。アイリーンは疑問を口にする。
「でも私たちはプロです。いたずらな闘争心でミスをするのは許されないわ」
「でもさ、守りっぱなしでしぶしぶチェッカーってのも、面白くないよね」
とカースティは言う。




