第6章 24H Nürburgring 27
大きく順位は落としたとはいえ、10位で復帰出来たし。うまくやればひと桁順位でのフィニッシュは出来そうだ。
龍一は眠る。
「ほんと臥龍ね」
その眠る様を見て、ソキョンはそう洒落た。ソキョンも三国志のことは知っている。それとは逆に臥龍が倒れ、鳳雛が奮戦するような感じになってしまった。
それから、時間は刻々と過ぎて行った。
1位レッドブレイドのKTM X-Bow GT2は悠然とトップを走り続ける。10位まで落ちたウィングタイガーのランボルギーニ・ウラカンは、路面状況が落ち着いてから攻め、9位のAIカーのベントレー・コンチネンタルをとらえて、パス。9位に上がった。が、8位との差は大きく開いていて。その差を縮めるべく、フィチから交代したアイリーンは力走を見せた。
交代した時間は、午前1時。予定通りの時間。龍一と交代したのは午後10時台だったが、その分フィチは長く走ったのだ。
8位もAIカーで、赤いダッヂ・ヴァイパーGTS-Rだった。
日付も変わった深夜の時間帯だが、そんな時でも目を見開きコースを走る選手たち。レースを見届けるガチ勢のギャラリーたち。
龍一も起きて、みんなと一緒に画面を見ている。
アイリーンはダッヂ・ヴァイパーGTS-Rを追い、徐々に差を縮めている。
スタートしてからだいぶ経って、各車の差も開き、ひとり旅状態のチームも珍しくなかった。ただその場合は、ドライブする自分自身がライバルとなる。
「なかなかやるじゃん……!」
アイリーンはドライブしながら歯噛みする。縮まってはいるものの、次の交代の時に貼り付けているかわからない。ヴァイパーもそれなりのペースで走っていた。
まだ視界でとらえられていない。タイム差から、頑張ればなんとかなるといったところだ。
「無理しないでください。落ち着いて」
ソキョンはそうアイリーンに伝える。1度ならず2度までもクラッシュするのはごめんこうむりたかった。
悔しいが、ここは守りに徹せざるをえなかった。リタイヤはチームとしても大幅なイメージダウンになり、スポンサービジネスにも響きかねない。
それを思うほどに、龍一のミスがいかに痛恨事だったかを思い知らされる。それは本人が一番痛感しているところだった。
10位のベントレー・コンチネンタルはフィチが思いっきりぶっちぎった。が、これも油断をすれば一気に差を縮めてくるかもしれない。
前との差を縮めるより、後ろに縮められないよう気を配るレース展開をしれいかなければいけなくなった。
かくして、ウィングタイガーは悔しい守りの走りをし続けることとなった。
アイリーンも言われた通り無理をせず、安全運転に徹し。午前3時となって、カースティと交代した。




