表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/104

第6章 24H Nürburgring 25

「Spiral Kとまたバトルをしたかったが……」

 アンディも小さくこぼす。

「残念だけと、契約満了ね……」

 ソキョンは小さくこぼす。自らのミスで順位を落とす事態になってしまっては、契約を更新することは出来ない。

 ここに、龍一とチームウィングタイガーの関係は、終わりを告げた。が、レースはまだ終わってはいない。

「ほら」

 とカースティにヘッドセットを差し出す。

「私がしゃべると怒鳴りつけちゃうからね。あなたが励ましてあげて」

「うん……」

 カースティがヘッドセットを受け取ろうとすると、フィチはそれを止めた。

「だめです。龍一もプロ。そんな慰めがなくても、自分の力で、責任でピットに戻らないといけません」

「あんたも意外に鬼ね」

「そりゃあ、一応でもプロですから」

 かえってソキョンが苦笑した。

 アイリーンは言葉もなかった。カースティも見守るしかなかった。

 ウラカンはとぼとぼ、のろのろとピットを目指す。雨に打たれ、霧に包まれながら。

 龍一は忸怩たる思いでいっぱいで。五里霧中の気持ちだった。

 もうチームにいられないのはわかった。しかしピットへ戻るのに必死で、今までの来し方を思い出すゆとりはなかった。

 思い通りに走らぬマシンを操作し、ピットを目指すことしかなかった。

 そんなウラカンを容赦なく追い抜いてゆくマシンたち。隻眼となったヘッドライトが白い霧と水しぶきを映し出す。

 今までいた世界から異世界に吹っ飛ばされたような気持だった。

「龍一、フィチと交代するよ」

「了解」

 ようやく終盤のロングストレートまでいたって、交代を告げられた。

 ロングストレートでも、どれだけ抜かれたかわからない。

 もどかしさが募るが、どうしようもなかった。

 アクセル全開で走っても長く感じるストレート。そうでなければ余計に長く感じるのを禁じえなかった。

 永遠に続くかと思われたストレートも、ようやくビルシュタインブリッジにいたり、丘を下る。よく出来たもので、ゲームでも引力の恩恵を感じた。

「ありゃあ」

 ヤーナだった。丘を下るウラカンを追い抜いてゆく。これでトップから1週遅れとなった。

「こんなことになっちゃうなんてねえ……」

 と言いつつも、ミラーは見ない。レースなのだ、不必要にミラーを覗かない。

 ウラカンはようやく下り坂を下り切り、上り坂を上り始めた。今度は引力が文字通りに引っ張る。速度も鈍る。

 パンクしたタイヤで走るのがこんなにも大変だとは。経験がないわけではないが。この大一番でのやらかしは、やはり痛かった。

 精神的なダメージも大きいが、心の痛みをこらえてマシンを進めるしかなかった。

 やっとのことで上り坂を上り切り、メインストレートにたどり着き。ピットインする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ