第6章 24H Nürburgring 24
ソキョンや優もさすがに体力温存のために、アイマスクをして休息をとっていた。その間他のクルーが監督代行をし、しばらくして交代するという感じだったが。
「あーっと、大変なことが起こりました!」
風画流が絶叫する。ウィングタイガーのクルーは、ああー! と絶叫し、レッドブレイドのクルーは、おおっ、と唸った。
休んでいたソキョンや優はアイマスクを外し画面を睨む。
「しまった!」
龍一は呻く。
リプレイ画面になる。なんと、あろうことか、ウラカンはフックスローレ(Fuchsrohre)という区間、高速の左コーナーでオバーラン。そのままガードレールに衝突。ガードレールに右側面をこすりながら進み。右のミラーはどこかに飛んでいった。ヘッドライトも右が消えた。
どうにか止まり、コースに復帰しようとするが、うまく走らない。悪いことは重なり、ガードレールにぶつかったことで右フロントタイヤがパンクしてしまったのだった。
それをX-Bowが追い抜いてゆく。
「マジで!?」
さすがのヤーナも驚きを禁じ得ない。
「ようし、もう無理するな! ステディに走れ!」
優は咄嗟にヤーナに指示を出す。1位のウラカンが自滅して、X-Bowがトップになったのだ。3位だった2位との差も広がっている。無理することはなくなったのだ。
「この、大馬鹿野郎!」
ソキョンは鬼の形相で、無線を通じて龍一に怒鳴った。
「すみません」
ウラカンはどうにかコースに復帰し、次の右コーナーを曲がりYokohamaブリッジを抜けてゆき。コースわきをのろのろとピットを目指すが。まだ先は長い。
幸いエンジンやサス、フレームにダメージはなさそうで。ピットインすればなんとかなりそうだったが……。
のろのろピットを目指す間に、どんどんと順位は落ちてゆく。
他のクルーに優佳、フィチ、カースティにアイリーンも、信じられないと、唖然とした面持ちで画面を見入っていた。
ウラカンの右側面は傷だらけでべこべこになり。ボンネットに描かれたチームエンブレム、翼を持つ虎も、どこか力なく悲しそうだった。
「レースはここに来て波乱の展開となりました。あろうことかトップのウィングタイガーのDragon選手がなんとクラッシュ! 幸いリタイヤは免れましたが、大きく順位を落としてしまいました。そしてトップに立ったのは、レッドブレイドのHoney Bear選手! 後方との差も開き、悠然とトップを走ります!」
その通り、もはや何の脅威もなくなったレッドブレイドのKTM X-Bow GT2は、雨と霧のニュルブルクリンクを、悠然と駆け抜けてゆく。
「こんなことになっちまうなんてなあ……」
雄平は唖然とこぼす。俊哉も小さく頷く。




