第6章 24H Nürburgring 21
ホテルでは、アレクサンドラとショーン、マルタは眠りについていた。朝起きてもウラカンが1位であることを祈りながら。
「ヤーナのやつもいい感じで飛ばしてるな」
優は長方形のカロリーバーをくわえながらつぶやく。レッドブレイドのクルーも各自食事を摂っている。そしてスポンサーからの差し入れのエナジードリンクも飲む。
雄平はやや気落ちして、部屋に入るなり、
「すいませんでした」
と詫びたものだった。優は苦笑しつつ、
「次は頑張ってな」
と言うしかなかった。
リアルでは晴れているが、ゲーム内は相変わらずの雨だ。霧も濃く視界も悪い。
ウラカンがノルトシュライフェに入る。やや遅れてX-Bowも入る。
道幅は狭くなる。バックマーカーの混雑具合も違ってくる。
右に左に曲がりくねるコースで、さらに右に左にバックマーカーをかわしてゆく。ウェットで滑りやすい路面で。
濡れた路面でスピンし、コースアウトからガードレースにぶつかり、マシはダメージを負う。あるいは、スピンしざまに他車と接触し多重クラッシュ。リタイヤを免れても、ペナルティーを課される。といったことも散見された。
1位と2位、直接的なバトルではないが、差は縮まったり開いたり。それに一喜一憂せず、マシンをコントロールする。神経戦の様相を呈していた。
画面が青く光った。
雷鳴が轟いた。
というときに、ウラカンはメインストレートに戻ってくる。第1コーナーまで150mの看板のところで、X-Bowがメインストレートに入る。
差はあれから変わっていない。途中途中でやや縮まることはあったが、終盤で引き離して、元に戻した。が、理想的な展開ではない。
「龍一、気合入れな。残留したいんでしょ! なら頑張りなッ!」
「了解!」
ソキョンは龍一を激励する。ツーリングカーレースで勝ち、波に乗れている。
控え室に戻ったカースティはベッドに横たわらず、画面をクルーと一緒になって観ている。フィチもアイリーンも一緒だ。身体を休めるといっても、横になりっぱなしはかえってくたびれる。背伸びをしたり、部屋を出て、構わない範囲で気晴らしに歩き回り、窓から外の景色を眺めるなどして、体調や精神の均衡をキープさせていた。
レッドブレイドもそれは同じだった。アンディに俊哉、雄平も思い思いの時の過ごし方をしていた。
部屋を出れば他チームの選手にも会う。適当な挨拶を交わしたり、雑談をしたり。
「てめえ、よくも!」
「なんだよ、お前こそ!」
そんな声が聞こえて、他の選手やスタッフが慌てて間に入って止めた。接触した選手同士が遭遇して、一触即発の事態となった。連絡を受けたクルーが急いで駆け付け、部屋に連れ戻す。




