第6章 24H Nürburgring 20
時間は午後9時を回った。
風画流が実況する。
「ウィングタイガーはViolet Girl選手からDragon選手に交代しました。ツーリングカーレースで優勝し、波に乗っている選手です。これからの走りに期待しましょう!」
「2位のレッドブレイドはYouHee選手からHoney Bear選手に交代! ツーリングカーレースでの悔しさを晴らす走りに期待しましょう!」
と夜香楠。
先にウラカンがコースインし、ややあってからX-Bowがコースインする。相変わらず雨は降り続いて。霧も立ち込め、コースを包む。
「午後9時になりました。実況は僕、夜香楠と、風画流さんとでお送りしていますが。この時間より1時間ごとの交代で実況してゆきます」
「はい。ということで、私風画流は休憩に行かせてもらいます。夜香楠さん、よろしくお願いします」
「はい、ごゆっくり」
以降、夜香楠ひとりで実況する。
「1位ウィングタイガーのウラカン、Dragon選手は、やはりコンディションのせいか、安定したペースでの走りです。2位レッドブレイドのHoney Bear選手、やや速めのペースで走っています。やや、なのですぐに追いつくことはありませんが、タイヤ交換の頃には追いつくかもしれません」
その実況の通り、龍一は無理をせず、無難な走りを見せ。ヤーナはやや攻めた走りを見せた。
コースインしてから1週し。ウラカンがメインストレートを駆け抜け、第1コーナーまで150mの看板のところで、X-Bowがメインストレートに入った。
カースティが走っていたころより差は詰まっている。
(慌てるな、落ち着いて走れ)
龍一は自分に言い聞かせる。
GPコース、幸いバックマーカーがまばらになり。ペースを上げる。落ち着いた走りはしないといけないが、落ち着きすぎてもだめだ。程よい緊張感を自分に感じさせるため、敢えてペースを上げた。
ノルトシュライフェは道幅も狭く曲がりくねっていて、さらにバックマーカーの存在。ペースを上げるのは難しいが、近代的なサーキットであるGPコースなら、ペースアップもしやすい。
「いい感じで走れてんじゃん」
ソキョンは肉まんをくわえながらつぶやく。夜も午後9時を過ぎればさすがに腹が減る。ウィングタイガーのクルー各自で食事を摂る。が、食べ過ぎると眠たくなり緊張感も薄れるのでほどほどに。
部屋に戻ったカースティに、クルーは歓待なのは言うまでもなかった。彼女もまんざらでもなさそうな笑顔だった。




