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第6章 24H Nürburgring 19

 夜香楠が実況する。

「ひどい霧です。視界めっちゃ悪いです。ゲームでもこんなコンディションで走らされるの、僕いやですねえ~」

「私も、ポーズボタンおしてレースやめちゃいますね。だからこれでも走っている選手たちは、本当に凄いです。視界がほとんど利かない中での、緊張感あふれる展開で」

 と、風画流が話を継いだ。

「リアルレースなら天気予報で雨がいつまで降るのか予測出来るのですが。このゲームには天気予報はありません。いつ終わるとも知れない中、我慢の走りです」

 それから夜香楠が継ぐ。

「トップのViolet Girl選手、ペースは落ちたものの、安定の走りを見せています。2位のYouHee選手も同じく。このコンデションなので、順位の変動は少ない模様です……」

「……と思いましたが、AIカーが徐々に順位を上げてきています。プレイヤーカーのペースダウンの間隙を突くように、順位を上げています! もしかしたら、終盤は上位に食い込むかもしれません」

 風画流は順位表を見ながら、そんな予測を立てる。

 エントラントも、実況の意見に反対はなかった。

「思い切りがいいわね。AIだけに」

 AIは選手と違い失うものはないからか。プレイヤーカーよりやや速めのようだ。

 霧の中で光るヘッドライトに気付いても、どうしようも出来ずに、抜かれてしまう。

「くそ、なんだありゃあ」

 抜かれた選手は苦々しく吐露する。AIだからか、霧の影響はプレイヤーよりも少なそうだ。

 時間は刻々と過ぎてゆく。遅く感じようとも、早く感じようとも。時は過ぎゆくもの。交代時間が刻々と迫っていた。

「じゃあ、行ってきます」

「うん、頼んだよ!」

 龍一は立ち上がり、クルーたちと拳を合わせ気持ちを注入して、部屋を出て、会場に向かった。

 同じようにして出たヤーナと一緒になる。彼女はいたずらっぽく笑う。

「せいぜい逃げな」

「いやいや、オレだって負けませんよ」

「言うねえ。楽しみにしてるよ」

 とかなんとか雑談しながら会場入りし、それぞれのシムリグそばでスタンバイする。

 ランボルギーニ・ウラカンがピットインした。カースティは素早い動きを見せシートから立ち上がり、代わって龍一も素早くシートに腰掛ける。

 その間、

「頑張って!」

「頑張るよ」

 というやりとりがあった。

 という時にKTM X-Bow GT2がピットインする。雄平とヤーナが交代する。

「すまねえ、頼んだ」

「任せな!」

 ヤーナは得意げにウィンクした。左腕のファイヤーパターンの赤いタトゥーも、気持ちがこもっているのかいつもより赤赤しいように見えた。

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