第6章 24H Nürburgring 15
彼女も名の知れたトップグローバル選手、速いのは知っていたが。ここまで速いとはと言葉もなかった。
バックマーカーも苦も無くひょいひょいかわしてゆく。
雄平も度肝を抜かれつつ、どうにか見える位置につけられてはいた。が、いつまでもつかわからなかった。
Violet Girlの次はツーリングカーで勝ったDragonだ。リーグ戦での不調を払拭して波に乗っている。このまま引き継がれたら厄介だ。
風画流が実況する。
「トップに立ったウィングタイガー、Violet Girl選手、怒涛のハイペースです! 2位との差を広げてゆきます!」
「2位のレッドブレイド、YouHee選手も懸命に追いますが、差は広がる一方です!」
と夜香楠が継いだ。
その通り、1位と2位の差は広がってゆき。Violet Girlことカースティのウラカンが、ピットアウトしてから1周し、メインストレートに戻って来て、第1コーナーに達した時に。ようやくYouHeeこと雄平のX-Bowがメインストレートに入ってくる。といった具合だった。
「YouHee! 意地見せな! 気持ちまで負けてんじゃないよ!」
と発破をかけるのは、ヤーナだった。優も止めなかった。彼女の言う通り、引き離されているからと言って、気持ちまで負けてしまってはまずい。
「わかってるよ!」
雄平もプロだ。言われなくてもわかっている。それをわざわざ言われて、ムカつくというのが正直な気持ちだったが。そのムカつきを走りにぶつける。
「なっかなか飛ばすわねえ」
ソキョンは感心しきりだ。戻って来たアイリーンはアレクサンドラとショーン、マルタがいないことに少し寂しさも感じつつ、仕方がないとクルーたちと一緒に画面に見入る。
「バックマーカーもひょひょいのひょいですねえ」
優佳も感心しきりだ。ライバルとしては手強いが、味方になればこれほど心強いことはない。
龍一もカースティの走りに見入っている。かつて彼女に勝ったのだが。自分でもよく勝てたと思うほどだった。
レッドブレイドの方では、戻って来た俊哉が苦虫を嚙み潰すような面持ちで、忸怩たる気持ちに駆られていた。
Rainbow Eireenから逃げきれずに追いつかれ、ピットインでの交代勝負で順位を入れ替えられて、引き離されていった。
「オレがもっと速く走れたら……」
「いや、よくやってくれた。次も頑張ってくれ」
苦々しくぽそっとこぼす俊哉の肩を、優はぽんと軽く叩いた。
「先はまだ長い。つまんねーことでリタイヤだけは避けてくれな」




