第6章 24H Nürburgring 14
X-Bowとウラカンはほぼぴったりひっついた状態だ。バックマーカーをかわすのも、2台一緒だった。
「ふんッ、粘るじゃないの!」
勢いに任せて抜こうと思っていたが、なかなかどうして、俊哉も巧みに進路を塞ぎ抜かせない。
結局そのままメインストレートに戻ってきて、駆け抜けてゆく。
ウラカンはX-Bowのインをうかがうが、これも上手に進路を塞いで抜かさない。
「無理しないで。離されないよう、着いて行ってください」
ソキョンは指示を出す。勢いに任せて前車に接触し事故らせたらペナルティを食らうし、最悪リタイヤだ。
「了解」
アイリーンもその意図を察し、返事をし、無理に抜こうとしなくなった。
しばらくして、カースティと雄平が控え室を出て会場に行く。出る前にクルーたちと拳を合わせて気持ちを注入したのは言うまでもない。
さて、ピットインのタイミングである。この周か、次の周か。
俊哉のX-Bowはどうにか粘り、この周を回り、終盤のロングストレートの先の丘を下る。アイリーンのウラカンは何度か突っついたものの、2位のままで丘を駆け下る。
下り切れば、上りになる。その先のコーナーの区間を越えればメインストレート。ピットインは、2台同時にだ。
風画流が実況する。
「さあトップ2が同時にピットインです!」
「先に出るのはどちらでしょうか!」
と夜香楠が話を継ぐ。
アイリーンと俊哉は素早くシートから立ち上がり、カースティが、雄平がシートに腰掛ける。その間にタイヤ交換もなされる。
交代のその間の瞬間、アイリーンはカースティに、
「Good luck!」
と声を掛け。
「頼んだぞ!」
と俊哉は雄平に声を掛け。
双方ともに、
「OK!」
と応えた。
先に動いたのは、ウィングタイガーのランボルギーニ・ウラカンだ。少し遅れてレッドブレイドのKTM X-Bow GT2。
「先にピットアウトしたのは、ウィングタイガーのViolet Girl選手、続いてレッドブレイドのYouHee選手!」
「ここに来て、順位の逆転となりました。Violet Girl選手が引き離すか、YouHee選手が抜き返すか、見ものですね!」
夜香楠と風画流は順位の変動に興奮し、生き生きと実況する。
「なんだこの娘! めっちゃはええ!」
しょっぱなから、雄平は小さくなってゆくウラカンのテールを見据え唸った。
ピットアウトしてから、Violet Girlことカースティのドライブするランボルギーニ・ウラカンは、まるで別のマシンになったかのようなペースアップを見せたのだった。




