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第6章 24H Nürburgring 13

 もしプロとして活動をすれば、それなりの成果を出す選手になっていただろうに。本業が好きだからと、アマチュアで実業団選手権での活動にとどめていた。

 時間は過ぎてゆき。2度目の選手交代が近づいてくる。

「なめんじゃないわよッ!」

 アイリーンはひとりごちる。彼女もプロである。見える位置に1位がいる状態でおとなしくするのは、プロとしてのプライドが許さなかった。

 かといって、俊哉もいいペースだし、バックマーカーもうざい、下手なペースアップは出来ない。

「さて、どうしようか……」

 いくか!

 あれこれ考えても仕方ない。いこう、とペースを上げた。ぐーんと下がってから上がり、右コーナーを駆けるフルークプラッツ (Flugplatz)にさしかかったとき、バックマーカーは少なく、丁度コースが空いた。

 アイリーンはペースを上げた。

(来てるな!)

 ウラカンのヘッドライトがミラーの中で大きくなってゆく。俊哉もペースを上げて逃げようと思ったが。バックマーカーにはばまれ、少しペースアップのタイミングが遅れた。

 左右の高速コーナーを抜け、下り坂。アイリーンはアクセルをベタ踏みし。ウラカンは激しい咆哮を放つ。

 KTM X-Bow GT2のテールが迫ってくる。もちろんうかうかしてはいないが、ウラカンほどペースが上げられないでいた。

 下り坂から上り坂になり、左の高速コーナー。ここは曲がり具合がいやらしく、いけそうでいけないコーナーだった。この区間はシュヴァルベンツァー (Schwedenkreuz)といった。

 俊哉も決して遅いペースではないが、キャリアに勝り一日の長があるアイリーンが、このいやらしい高速左コーナーを駆け抜けるのは上手かった。

「追いつかれた!」

 俊哉は苦々しくつぶやいた。

「慌てるな、落ち着いて進路を塞げ!」

 優の指示。

 高速左を抜ければ、低速の右コーナー。立ち上がりにYokohamaのブリッジがある。

 ウラカンはX-Bowを煽りながら下り坂を駆け抜けた。

 夜香楠が実況する。

「Rainbow Eireen選手、Toshiya選手をとらえました!」

「さあ、Rainbow Eireen選手がここから抜くのか、Toshiya選手が粘りを見せるか!?」

 と風画流が話を継いだ。

「よーっし! いいよいいよッ!」

 ソキョンはアイリーンが俊哉に追いついたのを見て興奮し、拳を握り締める。クルーたちも喜びの表情を見せる。

 下り坂を下り切り、上り坂になる。その向こうに右左の低速S字区間があった。

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