第6章 24H Nürburgring 12
午後の6時を回った。夜の帳が落ちてゆく。
秋の日はつるべ落としというだけあって、ゲームの中でもぐんぐん暗くなってゆく。各車ヘッドライトを灯す。
茜色の空は紺色へと変わってゆき、月が出て、無数の星々もきらめきだす。
「いいペースで走ってるわねえ」
ソキョンは苦々しい表情を見せる。レッドブレイドのピットインの間にトップに立ったものの、思ったほど引き離せず。このままいけば次のピットインで挽回されてしまう。
アイリーンも懸命に走っているが、タイヤのグリップは落ち、バックマーカーはやはり邪魔で思うようにペースを上げられないでいた。
幸い3位との差は開いているので、よほどのことがない限りは3位に落ちる危険性は少なかった。
ランボルギーニ・ウラカンがピットインをする。タイヤ交換作業をする。その間に、KTM X-Bow GT2がメインストレートを駆け抜けてゆく。
「ようし!」
レッドブレイドの面々は頷き合い。ウィングタイガーの面々はじっと画面を見据える。
「腹ごしらえ腹ごしらえ」
Violet Girlことカースティはおむすびを頬張る。あと1時間弱で自分の番。それに備えて、エネルギー補給だ。
「腹が減っては戦は出来ぬ、ってね」
ちなみに赤紫蘇ふりかけのおむすびだ。
龍一はベッドで寝ずに椅子に座って、皆と一緒に画面を見入っている。フィチはベッドで横になってリラックスし、体力と気力回復につとめる。やはり横になれると違った。
時間になると各車一斉にピットインをするが、現実と違い渋滞はなく、マシン同士接触せず透き通ってゆき。作業を終えると、ピットアウトしてゆく。
本来はタイヤ交換のみの予定でも、体調の問題や、目に余るペースダウンなど、やむを得ない事情による選手交代もあった。
同じコースを走っても、同じ状況ということはなかった。個々のチーム、選手によって様々だった。
ゲームでもリアルでも、もうすっかり夜の帳は落ちて、あたりは真っ暗になって。我慢比べとなった。
1位レッドブレイドのX-Bow、2位ウィングタイガーのウラカンはバックマーカーをかわしながら、自分のペースを保っていた。
俊哉はアマチュアながらレッドブレイドに助っ人オファーされただけあり、安定の走りを見せていた。
「本当にもったいないっすねえ~」
「まあ本人の意思だからなあ~」
「下手に上がったら私にやられて傷つくからね」
テキトーな雑談で雄平と優は俊哉の才を惜しみ、ヤーナは怖いことを言い、アンディは無言ながら愛想よく笑い頷いた。




