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第6章 24H Nürburgring 11

 当たったマシンはダメージを受け、ピットに戻らざるを得なかった。そのAIカーもペナルティを受けるとはいえ、AIなので何の痛痒もない。

「ああ、くそ」

 当てられたマシンは眉をしかめながら追突されることを警戒しながらピットへの危険な旅をせざるを得なかった。

 下位のチームは割り切り、完走狙いに徹した。もちろん不本意なことだが、耐久レースはやはり完走をしたいものだ。

「ビリでもいい、いや本当はよくないが、とにかく完走しよう」

 と下位のチームの監督は選手に伝える。

「おい、こりゃあ……」

 優が鋭い眼差しで順位表を見据える。後方からスタートしたGT・AIカーが徐々に順位を上げてきているのだ。

「下手したらトップグループに食い込みかねないわ」

 ソキョンも順位表の変動を見据え、警戒する。

「さあどっちが先にピットインする?」

 ソキョンがひとりごちる。そろそろスタートして3時間が経過しようとする。タイヤ交換のためにピットインせねばならない。

 優佳はタブレットを手に、チームのSNSでレース状況を伝える。

 マルタもまるで自分のチームのレースのように、鋭く画面を見据える。

 母親の走りを観ていたショーンだが、ぐずりだしたので、アレクサンドラはやむなく宿泊ホテルにショーンを連れて戻った。

「彼女をひとりにするわけにはいかないわ」

 と、マルタも一緒に戻った。

 他に子供はおらず、大人たちはレースに夢中でろくに相手してもらえない。暇を持て余したショーンはアレクサンドラに、

「ねえ、帰ろうよ~」

 とか言い、ぐずりだしたのだった。それはやむをえないことだった。レースの邪魔になってもいけないし……。

 レース中にビルを出るのは許可証が必要だが、あらかじめ用意してもらっていたので。警備員にそれを提示し、アレクサンドラとマルタはタクシーを拾ってホテルに戻った。

 アレクサンドラとショーンにマルタがホテルに戻ったことはアイリーンにも伝えられた。

「わかったわ」

 とだけ応えた。必要とあればそうすると、あらかじめ話をしていた。

 ゲームでもタイヤの摩耗はあり、徐々にグリップはなくなり、無駄なスライドが多くなってきた。

 トップ2で先にピットインしたのは、俊哉のKTM X-Bow GT2だった。その間、アイリーンのランボルギーニ・ウラカンがメインストレートを駆け抜けてゆく。

 暫定トップに立った。

 タイヤ交換を終え、俊哉のX-Bowはピットアウトする。

 陽が傾き、空も茜色になり、影も伸びる。


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