第6章 24H Nürburgring 10
夜香楠が実況する。
「1位、レッドブレイドのKTM X-Bow GT2、ドライブするのはToshiya選手。2位、ウィングタイガーのランボルギーニ・ウラカン、ドライブするのはRainbow Eileen選手です」
続いて風画流。
「レース開始直後はバトルを繰り広げていましたが、現在は膠着状態です。バトルよりもバックマーカーをかわすのが大変で、それどころではないようにも見受けられます」
「こりゃあなかなか大変だ」
俊哉は思わずひとりごち、
「慣れないもんだね、こういうのって」
とアイリーンまでもひとりごちた。経験はあるが、そう言う通り、なかなか慣れるものではない。
控え室のクルーたちも、じっと画面を見据える。
「Take it easy and stay calm」(無理せず落ち着いてください)
と、ソキョンは無線を通じアイリーンに伝える。
「我慢比べだ、堪えろよ」
そう優は俊哉に伝える。
「了解しました」
俊哉は応える。その通り、我慢比べだった。焦ったら負けだ。
下のカテゴリーはツーリングカーとスポーツプロダクション。性能差があり、すぐに追いついてしまう。うかうかしていたら追突してしまう。
「レースコントロール。違反行為がありました」
風画流が伝える。あるマシンが危険な違反行為をしたとしてタイム加算のペナルティを受けた。
その他にも、前のマシンに追突しクラッシュさせたマシンが危険行為としてピットのドライブスルーペナルティを受けた。
もちろん意図的ではないが、それでも守るべき一線をもうけて。一線を越えたら違反としてペナルティーを受けるのがスポーツだった。
いかにプロといえど、人間である。意図的ではなくとも違反行為をしでかしてしまうこともある。その場合、容赦なくペナルティを受ける。
他車への危険行為は、AIカーが相手であろうとペナルティ対象となる。
バックマーカーはAIカーだが、だからといって傍若無人な振る舞いは許されない。逆にAIも違反行為があればペナルティを受ける。実際、ゲーム内字幕で、AIカーもペナルティを受けた旨が伝えられた。
正確無比なドライビングをしそうなAIだが、実際はかなりでたらめなこともしたりする。
一番きついのは、無謀なマシンコントロールによる他車の巻き込みだ。
あるバックマーカーのAIカーがスピンをし、ストップ。それのそばを通り過ぎようとしたタイミングで突然動き出し、走るマシンに当たり、進路妨害をすることもあった。




