表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/104

第6章 24H Nürburgring 6

「ああーっと、後方でクラッシュ!」

 と夜香楠が実況し、風画流が継ぐ。

「1台ではありません、複数のマシンが絡んだクラッシュのようです!」

 その実況の通り、GTカテゴリーのマシンが3台、クラッシュし、コースアウトし、激しくガードレールに当たっていた。

「くそ!」

 選手は叫ぶ。他は無言。それもそうだ、プレイヤーカー1台とAIカー2台のクラッシュだった。その選手はプレイヤーカー最後尾のマシンだった。

 あろうことか、焦りから無茶をして、後ろを巻き込むクラッシュをしてしまったのだった。

「ああ、くそ、動け、動け……!」

 右下のマシン図、エンジンマークが赤い。相当なダメージがある。何とか動かそうとするが、思うように動かない。

 そうするうちに、AIカー2台は復帰して、行ってしまった。

「マジかよ、マジかよ……!」

 マシンは動かない。ターミナルダメージ=致命的なダメージにより、強制リタイヤとなってしまった。マシンはうっすらとゴーストのように消えた。

 24時間レースで、1周目の半分もないうちにリタイヤを余儀なくされる無念さは、想像を絶する。

 シムリグで頭を抱える選手の痛ましい姿が一瞬だけ映し出され。控え室の他の選手、クルーたちも天を仰いで。非情な運命を呪うしかなかった。

 これはプロの試合だ。序盤のリタイヤでも、そこで終わりである。救済措置はない。

 監督は選手を慰め、控え室に戻るよう言い。クルーには撤収作業を指示した。

 リタイヤした選手は力なく立ち上がり、開催スタッフに付き添われて控え室に戻り。監督の慰めのハグを受け。謝罪の言葉を口にする。

「残酷なようですが、これもプロの試合なんですね。僕でも頭を抱えて大泣きしてしまいます」

「本当に、言葉もありませんが。この悔しさを次に生かしてほしいですね」

 と夜香楠と風画流も思いやる言葉を口にした。

 しかしウィングタイガーとレッドブレイドの選手、クルーたちは無反応。自分のレースで手一杯。他の選手を思いやるゆとりなどなかった。

 それでも、マルタは心の中で合掌する思いだった。

 ソキョンは容赦なく、

「抜くのよ! Push push push!」

 とフィチに発破をかける。

「わかってますよ!」

 とフィチの返事。大きく息を吐き出す。

 フィチはチームのバンディエラだった。ソキョンの発破には慣れっこだ。むしろ強く言ってもらった方がやる気が出るというものだった。

「アンディ、行けそうか」

「Yes。行けそうです」

「よし、頼むぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ