第6章 24H Nürburgring 5
100台のマシンはゆっくりとニュルブルクリンク・フルコースを周る。
不思議とゆっくりとか、そんなことは考えなかった。24時間もある、いや、24時間しかないともいえる。この特別な時間は。それを噛み締めていたかった。
終盤のロングストレートの丘からくだり、またのぼり。
メインストレートにかえってくる。
画面真ん中に、数字が表示され、カウントダウンが始まり……。
GO!が表示される。
全車一斉にフルスロットル。空を震わせるマシンの咆哮が響き渡る。
スタートダッシュを決め、1番手で第1コーナーに飛び込んだのは、レッドブレイドのKTM X-Bow GT2、次いでウィングタイガーのランボルギーニ・ウラカン。
夜香楠が腹に力を込めて声を出す。
「ニュルブルクリンク24時間耐久レース、スタートです!」
「24時間後にトップでいるのは、どのチームのマシンでしょうか!?」
風画流が話を継ぐ。
2階観客席は拍手が沸き起こり。ライブ配信のチャットのギャラリーたちも、Go go go! とレーススタートの喜びを表現する。
さすがに100台のマシンが走る光景は、ゲームとはいえ壮観だった。
100台のマシンのうち、プレイヤーカーは最初の25台。以後の75台はAIカーだ。
プレイヤーカーの最後尾は、後ろからAIカーに突っつかれて、抜かれてしまい。AIカーに挟まれた格好になった。
「くそ、こりゃあえらいレースになるぞ」
と、ひとりごちた。
自分を抜いたAIカーを追うも、ついてゆくのがやっとで。しかも後ろから迫られている。1周持つかどうか。
後ろから2番目のマシンも、早くもAIカーが最後尾のプレイヤーカーを抜いたことを知り、
「マジかよ!」
と、驚愕を禁じえなかった。
最後から2番目のマシンも1周持つかどうかわからなかった。
トップグループといえば、1番手にレッドブレイドのKTM X-Bow GT2、2番手にウィングタイガーのランボルギーニ・ウラカン。3番手にはCyber Driverのダッヂ・ヴァイパーGTS-R、以下RacingBallのアストンマーティン・ヴァンテージ、Ghost_Simracerのポルシェ・911……。
と、隊列を組むように、あるいは抜きつ抜かれつしながらコースを走る。
北コースに入る。アップダウンの狭いあるくねくね道。しつこいようだが、ラリーのターマックコースのようだ。パワーのあるGTマシンで走る場合なおさらラリーのターマックコース感が増す。




