第5章 Day4 and Day5 1
ツーリングカー決勝のあと、チームの打ち上げで予約していたレストランで楽しいひと時を過ごして。
Day4の休日、それぞれがそれぞれ、思い思いの休みを満喫していた。
休みのDay4はチームクルーや選手、観客は会場ビルに入れない。が、開催スタッフはビル入りし、シムリグやPC、ディスプレイなど使用機材のチェック、調整をしていた。
翌日からは、大一番であるニュルブルクリンク24時間耐久レースである。
公正な試合のため、機材チェックは欠かせない。
龍一といえば、カースティと一緒にホテル周辺を散歩し、コンビニのフードコートでリラックスのひと時を過ごしていた。
缶コーヒーとお菓子が置かれたテーブルを挟んで、向かい合って、日本語と英語を交えながら、あれこれ話している。
龍一もチーム入りしてから、英語と韓国語を学び、ある程度だが話せるようになっていた。
聞けば、カースティは来季を最後にeスポーツ選手を引退して、海洋研究所入りして。本格的に海洋研究の道を歩むのだという。
「海の中は神秘にあふれているわ。その神秘の中に潜ってみたいの!」
と彼女は溌剌と言った。
「夢や目標を持って頑張るのは、素晴らしいことだよ」
龍一は彼女に脱帽だった。eスポーツ選手として名を馳せたが、惜しげもなく引退して海洋研究者になるというのだ。夢を複数持って、頑張っている彼女の姿がまぶしく感じる。
そもそもeスポーツ選手でいる今でも、海への学びを欠かさず。パートタイム研究者として研究所に、大海原にと、赴くときもあるのだ。彼女のドリームチェイサーぶりには、脱帽させられっぱなしだ。
「龍一は夢ないの?」
「夢? そうだな、ウィングタイガーで頑張って、チャンピオンになりたいんだけどね」
昨日のツーリングカー決勝で勝ったとはいえ、ウィングタイガーに残留出来るかどうかはまだ決まっていない。現時点を点数にして表現すれば、100点満点中50点。
残留が決まるのは、耐久の成績次第。
「まずは、耐久で勝ちたいんだ」
「そうだね、私も頑張るよ!」
ちなみにフィチは、昨夜の打ち上げで飲みすぎて、二日酔いでホテルの部屋で寝込んでいた。
アイリーンはパートナーのアレクサンドラと、息子のショーンの3人、家族水入らずのひと時を別の場所で過ごしていた。
「でもね、まだ日本の海には潜れていないんだ」
「そうだったね、そういえば」
「日本の海に潜れる時があったら、龍一も知らせるね」
「ああ、応援に行くよ」




