第4章 Touring car final 16
風画流が実況する。
「ツーリングカー決勝レースを制したのは、チームウィングタイガーのDragon選手!」
続いて夜香楠。
「2位にチームレッドブレイドのHoney Bear選手、3位にはチームウィングタイガーのSpiral K選手が入りました!」
2階の観客席の観客たちも、おおー、と声を上げる。
画面には龍一が映し出された。
強く目を閉じながら、右手の拳を握り締め。ガッツポーズをしている。その強く閉じられた目から、涙が零れ落ちた。
「龍一、泣いてんの!」
最初はしゃいだソキョンたちチームクルーはそれを見て、言葉もなかった。やはりリーグ戦での苦戦は言葉に出来ないくらい悔しかったし。それだけにこの勝利の喜びも、言葉にならないくらい嬉しいものだった。
対するレッドブレイドのクルー。ヤーナは2位で、雄平はGhost_SimRacerを抑えて4位入賞。
「やられたな」
と優は言った。不敵な笑みを浮かべて。しかし、勝てなかったのは、やはり悔しいことではある。次の耐久で取り戻すと、気持ちを切り替えていた。
チャットでも、龍一の勝利を祝福する言葉と。gg、グッドゲームと表示される。
レースの結果は、入れ替わりでウィングタイガーとレッドブレイドが1位から4位だった。このレースはウィングタイガーとレッドブレイドのチーム対決にもなった。
「いつまで泣いてんのよ」
と、龍一の肩に置かれる手。ヤーナだった。そのそばにフィチ、雄平。
はっとして、落ち着きを取り戻し、顔を上げる。
「たいしたもんだよ、君は」
とフィチは手を差し伸べ。龍一はその手を借りてシムリグから立ち上がる。
「やられた。あんたホントすげーよ」
と雄平。表彰台には立てなかったが、自分の仕事をやり切り、さっぱりした表情だった。
気が付けば、他の選手も来て、龍一を祝福する。その様子が映し出される。
「あ、ああ、うん。まあ、必死だったよ、うん」
龍一は勝利に興奮しすぎたり照れたりで、かえって言葉が出ない様子だった。
Ghost_SimRacerもRacingBallも龍一を祝福し、親指を立て握手を求めた。
龍一はそのほかの選手からも握手攻めに合い、はにかみつつ握手に応じた。
「選手の皆さんに申し上げます。表彰式の準備のため、1位から3位までの選手を除いて、チーム控え室にお戻りください」
と夜香楠。続いて英語で風画流が同様のことを告げる。
言われた通り、4位以下の選手は会場を後にしないといけないが。雄平は、スタッフに、いていいですよと言われてとどまった。




