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第4章 Touring car final 10

 雄平のRS3 LMSがGhost_SimRacerの03を塞ぐのに専念しているような感じは、画面越しからでもわかった。

 ソキョンも、覚悟を決めた感じに息を吐き出し、

「フィチ、なんとか行けそう!?」

 と問うた。

「ええ、まあ、なんとか行けそうです」

「なら、ペースを維持して、抜かせないようにして!」

 とフィチに言い。龍一に対しては、

「前をプッシュして!」

 と発破をかけた。

「レッドブレイドはチームオーダーを出したっぽいわ。なら私らはHoney Bearを挟撃するのよ!」

 と両者に言う。

 03が迫ってきているのはフィチと龍一も察していたが、4位の雄平が後ろを塞ぐのに専念するとなれば。自分とこには、ガンガン行かせようとなった。

 右に左に、上ったり下ったりのくねくね道を飛ばし。終盤の直線。

 フィチのヴェロスターNにヤーナのRS3 LMS、シビックタイプR、フルスロットルでやや上りの直線を駆け抜ける。

 3位と4位との差はやや開いた。雄平はチームオーダー通り、後ろを塞ぐのに専念したからだ。

 終盤の直線までに雄平も出来る限りペースを上げて、スリップストリームに入られないようにしたかったが、03に張り付かれたまま、引き離せなかった。

「悪いが行かせてもらうぜ!」

 勢いに乗ったGhost_SimRacerのLynk & Co 03は雄平のアウディ・RS3 LMSをとらえ。スリップストリームに入ろうとするが、雄平はラインをずらして右に寄り、真後ろにつかせない。スリップストリームは前車の真後ろについてこそ効果があるものだ。

 雄平もうまく速度を乗せることが出来たので、純粋なスピード勝負でなら抜かれることはなかった。

「頼むぞ、ヤーナさん……!」

 ぽそっと声が漏れた。

 後ろを塞ぐのに専念したため、前との差が開くのはいかんともしがたかった。

 直線の上りを上り切り、高速左コーナーの丘から一気に下り坂を駆け下り。下り切ってから、上り坂。微妙な左コーナー。ここで調子に乗ってコースアウトした回数、数知れず。

 ここで、4位と3位との差はさらに開く。

「なんだこの野郎。そうか、お守りに徹しやがって。チームオーダーか!」

 前のRS3 LMSがチームオーダーを忠実に遂行しているのを察し、Ghost_SimRacerは苛立ちを隠せない。

 最後のS字を抜け。

 メインストレート。

 フルスロットル。

「ありがとうよ雄平、このレース、絶対勝つよ!」

 フィチのヴェロスターNを追いながら、ヤーナはぽそっとつぶやいた。

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