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第4章 Touring car final 9

 上り坂を上り切って、ややフラットになって、高速左を抜けて。右ヘアピンを抜ければ、やや上りの高速区間になる。ここでどこまでベタ踏みで行けるかが、キモになる。

 そこに来た時には、雄平のRS3 LMSの後ろに、Ghost_SimRacerの03がぴったりと張り付いていた。

「くそ、なんて野郎なんだ!」

 5位との差は開いていたし、トップ4だってそれなりのペースで走っているというのに、そこに追いつくなんて。本当になんて野郎なんだ、だった。

 フルスロットル。

 画面に表示されるタコメーターはレッドゾーンを指し、マシンは唸りを上げる。

 スピードはツーリングカーでも200キロを超える。道幅は狭い。ラインを違えれば、エスケープゾーンの芝生に捕まり、減速どころか、そのまま引っ張られてコースアウトで、ガードレールに激突だ。

 飛ばせる代わりにスリリングな区間でもあった。

 5台、うまくその区間をクリアしてゆき。進むにつれて上り坂もきつくなる。

 右コーナー、また右コーナーを抜ければ。ニュルブルクリンク名物の、AMGの看板がある、コースイン側にきついバンクの付いたヘアピン。Caracciola Karussellカラツィオラ・カルッセル

 その手前でGhost_SimRacerの03が迫り、雄平のRS3 LMGはラインを塞ぐ。

 5台バンクに上手く乗り、ヘアピンをクリアしてゆく。

「あの03は予想外だったわ」

 ソキョンが忌々しくつぶやく。まさかの速さ。なかなかの飛ばしっぷりだ。

 2階中ホールの観客たちも、トップ争いを搔き乱しそうな03に期待し、おおー、と声を上げる。

「くそッ、オレはサポートじゃねえんだぞ」

 Ghost_SimRaerの03を塞ぐのに手いっぱいで、前を追うどころではない。シビックタイプRのテールやリアスポイラーが、心なしか離れて行っているように感じる。

「……。仕方ねえなあ」

 優は戸惑いつつ、

「雄平、後ろを塞げ。チームオーダー発動だ!」

 と、指示を出した。応える雄平は、小さく、

「……。はい」

 と応えた。

 当初はチームオーダーはなかったのだが、03に対処するために、やむなく緊急発動となった。

「これでなにがあっても、ハブれねえな」

 と苦笑交じりに言う。もともと契約更新の予定ではあったが。

 ヤーナのRS3 LMSはフィチのヴェロスターNを追っている。勝利をヤーナに全懸けし、雄平はそのためのサポートに回ってもらうことになった。

「チームオーダー出した、っぽいですね……」

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