第4章 Touring car final 6
第1、第2のシケインを抜けるころに、5位以下のマシンたちがメインストレートを駆け抜ける。
近代的なGPコース、バトルをするならやはりここ、フィチのヴェロスターNはヤーナのRS3 LMSを猛プッシュし、プレッシャーを掛ける。が、その後ろから雄平が、龍一が、それぞれ前車にプレッシャーを掛ける。
しかしヤーナも踏ん張る。
右のヘアピンでヴェロスターNのノーズをインに差し込むが、ヤーナもぎりぎりのブレーキングで踏み込ませず。後ろ3台を従えてコーナーをクリアする。
やや直線で加速し、左、右コーナーが続き。ほぼ直角の左、ヴェロスターNはぐんぐん迫り、ついにRS3 LMSのイン側に入って、コーナーをクリアしざまに、パス。
「やった!」
ソキョンらウィングタイガーのクルーは拳を握り締めてこのパッシングを喜び、優らレッドブレイドのクルーは厳しい面持ちでノートPCを見据える。
2階中ホールの観戦スペースでの観客たちも、おお、と声を漏らす。
夜香楠が伝える。
「ウィングタイガーのSpiral K選手がレッドブレイドのHoney Bear選手を抜いて1位に上がりました!」
「しかしHoney Bear選手も負けじと食い下がります!」
右コーナーを抜け、高速右。アクセル全開で、エキゾーストノートを響かせて駆け抜ける。
その先に、左、右のシケイン。雄平のRS3 LMSがぐんぐん迫り、最初の左でヤーナのRS3 LMSのイン側に入ってパス。
次の右をクリアするころには、フィチのヴェロスターNに迫った。
「おおっと、下剋上か」
優は不敵な笑みを浮かべる。レッドブレイドにチームオーダーはない。雄平は向上心が強い。
(余生をのんびり過ごすなら、道を開けてくれよ)
などと雄平は心の中でおどける。
「やってくれんじゃないの、このままじゃ済まないからね!」
ヤーナは声に出して言う。優らクルーは苦笑。
かくして1位、Spiral KのヴェロスターN。2位、YouHeeのRS3 LMS。3位、Honey BearのRS3 LMS。4位、DragonのシビックタイプR。
北コースに入る。
GPコースとは違う、森林の丘陵コース。バトルはしづらい。が、しづらいからしない馬鹿はいない。
ラリーのターマックコースのような路面。上ったり下ったりの、くねくね道。雄平のRS3 LMSはフィチのヴェロスターNをプッシュする。
ヤーナもそうだが、フィチも世界的プレイヤーで、グローバルの舞台で活躍した選手。




