第3章 Race of AM 10
このレースも3位までの選手にはインタビューがある。
場内放送で実況のヴァーチャルチューバ―がインタビューするのだ。
龍一はフィチと拳を合わせ、一足先に控え室へと戻ってゆく。
「Spiral K選手、1位おめでとうございます。決勝レースへの意気込みをお聞かせください!」
と夜香楠。
「ありがとうございます! もちろん、勝ちに行きますよ!」
と、英語と日本語も流暢なトライリンガルなフィチは、はきはきと日本語で答え。最後、カムサハムニダと言った直後に、
「なーに言ってんの、勝つのは私だよ!」
とヤーナが割り込んできて、笑いが起こった。もちろんこれも日本語だ。日本に来た当初は日本語を上手く話せなかったが、今はもう上手なものだった。
「Honey Bear選手も、もうファイティングスピリッツに満ち溢れてますね!」
と風画流。
「あったぼーよ! 決勝レース、応援してね!」
と愛想よくウィンクもする。続いて雄平。彼はヤーナとは対照的に大人びたおとなしさを見せていた。
風画流が話をする。
「決勝レースに向け、意気込みをお願いします」
「はい。このレースで勝って、グローバルな舞台での活動に繋げたいと思います」
と、実直に答えた。
「ありがとうございました。決勝レース楽しみにしています!」
「ありがとうございます」
と、会釈をし、雄平は会場を後にする。チームメイトのヤーナと、フィチも一緒だ。しかし不必要な会話はなかった。3人の間には、電撃がほとばしるような緊張感がみなぎっていた。
決勝レースはもう始まっているのだ。
夜香楠がアナウンスする。
「午前の第1、第2レースは終了いたしまいしました。決勝レースは午後7時スタートになります」
続いて風画流。
「それまでの間は、インターバルとなります。会場から出られて再入場する場合は、チケットのQRコードが必要になりますから、誤っての削除などにお気を付けください」
そしてふたり同時に。
「それでは、決勝レースでお会いしましょう!」
と、実況もひとまず終わった。
午前のレースが終わり、ひと息ついた観客たちは、ビル内で思い思いに過ごしたり、気晴らしに外出したりしながら、決勝レースへの期待を膨らませていた。
エントラントはどうするのかというと、控え室で過ごす者、一旦ホテルに帰る者、外出で気晴らしする者とに分かれた。
レッドブレイドとウィングタイガーは、一旦ホテルに戻ることになった。裏口から出てバスで送ってもらって。
それぞれの部屋でくつろいだ。




