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第3章 Race of AM 5

 スチュワード(審査員)も、フライングではないことを確認した。

(だが上等だ、やってやろうじゃないかッ!)

 今は日本国内での活動だが、将来的にグローバルでの活動を目指している雄平にとっては、このカップ戦はまさに絶好のチャンスだった。

「逃げな逃げな、つかまえてやるからさ」

 ヤーナは不敵な笑みを湛えつつ、大きなリアスポイラーを装着するヴェロスターNのリアテールを見据える。

 龍一は無言。プレイ中は黙り込むタイプだ。だから実況配信は出来なかった。

「いいダッシュね」

 とViolet Girlことカースティはデリバリーで頼んだおむすび詰め合わせを食べながらテレビを見据えていた。このおむすびは九州のお米でつくられており。カースティのお気に入りのおむすびは、白米と梅のツートップだった。

「でも油断出来ないよ。もっと下から追い上げる選手もいるかもしれないし」

 と、アイリーンは言う。が、しかし、トップ4と、5位以下との差は、GPコースの間であれよあれよと開いてゆく。

 5位の選手が調子が悪いらしく、以後の選手がとうせんぼを食らったようだ。

「外れちゃった」 

 てへぺろの仕草でアイリーンはごまかし、アレクサンドラとショーンは微笑む。

「ラッキーね」

 とマルタは言う。5位以下の選手には悪いが、これもレース。それもプロの、だ。

 フィチは様子見などせず、しょっぱなから飛ばすが。ヤーナに龍一、雄平もよく着いてゆく。

 ヴァーチャルチューバ―の実況とともに、マシンのエキゾーストノートも響き渡る。

 近代的なGPコースを駆け抜け、終盤ほぼストレートの高速右コーナーをアクセル全開で抜け。ブレーキング。左から右へのシケイン。ヤーナのアウディ・RS3 LMSのノーズがヒョンデ・ヴェロスターNのテールにすれすれまで迫る。

 シケインを抜ければ、左コーナー、北コース・ノルトシュライフェに入る。雰囲気が一変する。

 近代的なGPコースから、路面に落書きがされ、道幅が狭くなり、エスケープゾーンも狭く、ガードレールが迫るような古風な趣のノルトシュライフェ。ガードレールの向こうの土手の上に観戦スペースがあり、レースを楽しむ観客たちがいるが。もちろんCGで非実在のものである。実在する観客は2階中ホールで、ノルトシュライフェに入って、好レースを期待する。

 選手たちにとっても腕の見せ所だ。

 ヤーナのアウディ・RS3 LMSはフィチのヒョンデ・ヴェロスターNにぴったり張り付いている。

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