第3章 Race of AM 4
館内放送で、選手たちはスタートのためのスタンバイをしてくださいと伝えられる。言われた通り、選手たちはスタンバイする。
観客たちも中ホールの椅子に座り、レースの始まりを待っている。
ビルの中に緊張感が駆け抜ける。
シムリグのディスプレイには、各選手の視点で、スターティンググリッドについてるところが映し出された。ライブ配信では、リプレイと同じように第三者視点、実際のレース映像のように映し出されている。
時々、シムリグ備え付けの小型カメラを通じて選手の様子が映される。
ポールポジションはゼッケン99のアウディ・RS3 LMS、ヤーナ。2番手はゼッケン2のホンダ・シビックタイプR、龍一。3番手はゼッケン33のアウディ・RS3 LMS、雄平。4番手はゼッケン3のヒョンデ・ヴェロスターN、フィチ。
選手名はライブ配信では、ハンドルネームで記されている。
「さあもうすぐレースが始まります。予選トップはHoney Bear選手、次いでDragon、YouHee、Spiral Kの各選手が続きます……」
と、風画流。
「第1レースも好レースが繰り広げられました。第2レースも期待しましょう!」
と、夜香楠。
控え室のクルーたちも、観客たちも、画面を凝視する。
スタート時間が、1秒、また1秒と迫り……。
午前11時となった。
レーススタート!
各車一斉にスターティンググリッドから飛び出す。
第1コーナーに先頭で飛び込むのは、
「いくのよ、フィチ―!」
思わずソキョンは絶叫する。フィチのヴェロスターNがうまくスタートダッシュを決めた。続いてヤーナのRS3 LMS、龍一のシビックタイプR、雄平のRS3 LMSと続く。
「ゼッケン3、ウィングタイガーのSpiral K選手、見事なスタートダッシュ! そのまま第2コーナーもクリア!」
と、夜香楠。
「続くのは、ゼッケン99のHoney Bear選手、ゼッケン2のDragon選手、ゼッケン33のYouHee選手!」
と風画流。
「くそ、なんてスタートダッシュだ!」
雄平はうなる。思えば、タイム差もわずかではあったが。まさか4番手から好スタートをかますとは。
(韓国の選手は化け物ぞろいかよ!)
レジェンド級のeスポーツ選手もいて。すごいもんだと思っていたが。その強さの秘訣はメガネなのだろうか?
ともあれ、スタートのリプレイが流れる。スタートシグナルが消えると同時にヴェロスターNは好ダッシュを決め、前3台を瞬く間に抜いてゆく。




