表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/104

第6章 24H Nürburgring 42

 夜香楠が実況する。

「さらに、AIカーの2台、ダッヂ・ヴァイパーGTS-Rとベントレー・コンチネンタルもこのバトルに加わりそうです」

「それにしても驚かされるのが、Honey Bear選手の動向です。先に行かせても問題ないのですが、ラインを塞ぎ、抜かせません! やはりこれもシムレーサーとしての意地でしょうか!」

 風画流が話を継いだ。

 まずGPコース。3台のマシンはパッシングの機会をうかがう。

 ヤーナも先にはいかせない。

「やはりそうなったか」

 優は苦笑するしかなかった。他の3選手にクルーは固唾を飲んで画面を見守るしかなかった。

「どうしますか? あんまり粘っても、何かあったら……」

「まあ、待て。しばらく様子を見よう」

 他のクルーが心配になっているのを、優は諫めた。ヤーナの性格を承知の上で使っているのだ。

 4台のバトル状態ではあるが、コースのいたるところにマシンがいる状態で、それらを右に左にかわしながら走らないといけない。

 だから、追走状態でも、順位の変動はなかった。何より龍一の場合、何かあった時のペナルティーはより重いのだ。さすがにそこまでの迷惑をチームにかけるのは、はばかられた。

「煽って道開けさせようたって、そうはいかないよ!」

 ヤーナは前を見据えて、そう言った。

「まったく、やっぱりすごい人だ。でも、そうでなくっちゃな」

 龍一は追いつつ感心していた。道を譲っても問題ないし、その方が楽なのに。だがそれがヤーナなのだ。龍一もそんなところに好感を抱いていた。

 GPコースを抜け、ノルトシュライフェに入る。土手に挟まれ、道も狭く、エスケープゾーンも狭く。ラリーのターマックコースのようなくねくね道のくせに、スピードは出る。

「……」

 X-Bowに煽りを入れた龍一だが、やはり思い直して、追走にとどめた。そうすれば、後ろからAIカーが仕掛けてくる。 

 ミラーを瞬時に覗き、巧みにラインを塞ぐ。

 ヤーナは良いペースで走っているので、それに追走して引っ張ってもらう。追われるより、追う方が楽なのはレースの常識。とはいえ、後ろのAIカー。

 後ろに神経を使いすぎても引き離されかねない。なかなかに難しい立場だ。もっとも、立場を考えればそれらを放棄し、AIカーも先に行かせ、ゴールまでひとり旅と割り切ってもいいのだが。 

 なんか、そういうことに強い抵抗感があった。それをしたら本当に負ける、と。

 その一方で。

 もういいよ、あんたよく頑張った。楽な走りして。

 ソキョンは、そんな言葉が何度も喉まで押し寄せた。しかし堪えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ