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【Web版】俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件  作者: 赤金武蔵


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第95話

   ◆梨蘭◆



 はい。やってしまいました。

 どうも梨蘭です。おはようございます。


 朝の5時を回ったところかしら。

 いつもの癖でパッチリと目を覚ました私は、今困惑の渦中にいた。


 寝ていたのは、自分のベッドじゃない。

 それどころか、慣れ親しんだ自分の部屋ですらない。ここは客室ね。


 そして、私を優しく包んでくれているものの正体。



「……すぅ……すぅ……」

「〜〜〜〜ッ!!!!」



 あ、あ、あ……暁斗……!?


 少し顔を上げると、大好きな人の、気持ちよさそうな寝顔が。

 私を抱き締める力のなんと強いこと。キュンです。

 しかも、暁斗の濃ゆい濃ゆい匂いが私を包み込む。キュンキュンです。


 って、キュンってなってる場合じゃない!


 昨日のこと、ぼんやりとだけど覚えてる。

 頭が回らず、体がふわふわして、暁斗のことで頭がいっぱいになって、暁斗といっぱい触れ合いたくなって。そして……あぅぅ、思い出しただけでも恥ずかしい……!


 多分私は酔っていたのかも。パパ達が飲んだお酒が気化して、酔ってしまったのかもしれない。

 私、お酒弱すぎじゃないかしら。大人になっても、お酒飲むのはやめよう。

 ……あ、やっぱり暁斗の前で素直になりたい時だけ飲もう。そうしよう。さすが私、悪魔的発想だわ。



「……すぅ……くぅ……」

「……起きないわね」



 暁斗、ぐっすりおやすみタイムだ。

 昨日は緊張してたし、疲れたのかも。



「お疲れ様、暁斗」

「ん……むにゃ……」



 は? は? 可愛すぎか? 私の暁斗、可愛すぎか??


 みんな見てー! 全世界のみんな! 暁斗が「むにゃ」だって、「むにゃ」だってーーーー!!

 こんなかっこいいのに可愛いとかギャップありすぎでしょ! あー見せたい! 全世界の人に見せたい!

 あっ、やっぱダメ! この暁斗は私だけの暁斗だから! 私専用暁斗は貸し出し不可です!


 やばい。興奮しちゃいました。自重自重。


 ……ふむ。こんなに起きないなら、ちょっとくらいイタズラしてもバレないわよね。


 よし。


 高鳴る心臓を抑えて、そっと暁斗の首筋に顔を埋める。



「すーーーーーーーーーーーーーーーー……はぁーーーーーーーーーーーー……すぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……ほゎ……」



 き、キクぅ〜……!

 脳に直接キマるような感覚……これはやばい。やばすぎる。

 もしかして、暁斗と結婚したら毎日こんなことできる? 私の人生勝ち確。人生優勝。うへへ。


 ……あ。暁斗、汗かいてる。


 ……ごくり。


 い、いやいやいや。それはダメ。ダメよ私……! さすがにそこを踏み越えたらダメすぎる! 運命の人だからいいとかの前に、人としてアウト!


 気持ちを立て直し、暁斗を起こさないように腕の拘束から抜け出す。


 ふぅ……もう汗だく。暁斗が起きる前に、シャワー浴びて身なりを整えなきゃ。


 名残惜しいけど、まだぐっすり眠る暁斗から離れて客室を出る。

 と……あら? リビングから声が。もう誰か起きてるのかしら。



「おはよー」

「あら、梨蘭。おはよう」

「おはようリラ」



 パパとママが起きてた。相変わらず、どれだけ飲んでも朝早い。


 2人並んでコーヒーを飲み、何かテレビを見てたみたい。今は何も映ってないけど……録画かしら?



「何見てたの?」

「見たいか? じゃ、再生してあげよう」



 パパがリモコンを操作し、録画を再生する。


 部屋だ。見覚えのある部屋。

 これ……客室?

 ……嫌な予感しかしない。



『おはようございます。よい朝ですね』



 あ、ママ。

 ママがスプーンを片手に、まるでナレーターのようなことをしている。

 ……何してんの?



『では、早速見てみましょう』



 見てみましょうって……んなっ!?!?


 大画面に映し出された、私と暁斗の寝姿。

 暁斗は大の字に。私は暁斗の首に抱きついてとろけた顔をしている。はっきり言って、人に見せられない顔だ。


 てかなんつーもんを朝から見てんのよ、うちの両親は!!!!



「いやぁ可愛い! リラ、可愛いなぁ!」

「甘い空気出しちゃってぇ。ブラックコーヒーが甘く感じるわぁ」

「もうやめて!」



 いやっ、これ普通に盗撮だから! アウトだからぁ!

 急いでリモコンを取り上げてテレビを消す。ふう、これで一安心。



「因みにスマホにもデータがあるんだなぁ、これが」



 と、ママがスマホでさっきの続きを見始めた。どんだけ用意周到なのよ!?



『見て父さん。すっごく可愛い寝顔っ』

『そうだなぁ。こんな幸せそうな顔をするなんて……よかったぁリラ』

『何泣いてんのよ』

『娘が旅立ってしまうようで、嬉しいような悲しいような心境です』

『解説ありがとう』



 いやああああああああ!!!! 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいいいいいいいい!!!!



「これは我が家の家宝だなぁ」



 もうやめてえええええええええ!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 冒頭の >はい。やってしまいました。 >どうも梨蘭です。おはようございます。 前回とのギャップが激しさに、思わず飲んでいたお茶を吹きました。
[一言] 暁斗君、梨蘭ちゃんの両親に認められて良かったね。(としか言えない)
2021/06/05 16:28 退会済み
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