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【Web版】俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件  作者: 赤金武蔵


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第79話

短編書きました。

よろしければ読んでみてください。


『氷の姫様は、夢の中で誰かにデレる。』

https://book1.adouzi.eu.org/n1521gz/

   ◆



 ……普通だな。


 翌日の教室。

 何となく竜宮院を目で追っているが、何事もなく楽しげに梨蘭と話していた。

 まあ、今まで隠し通して来たんだ。今更取り乱すようなマネはしないんだろうけど……豪胆と言うか、なんと言うか。


 窓際で佇み、微笑みを絶やさない2人。

 クラスメイトも、その2人の姿に見とれていた。

 本当、2人って一緒にいると絵になるな……しかも1人は、俺の運命の人だし。


 竜宮院には悪いけど……本当俺、幸せ者なのかもしれない。


 ぼーっと2人を見ていることしばし。

 登校してきた龍也と寧夏が、こっちにやって来た。



「へいへいへーい! 暁斗、ちすちすー!」

「アッキー、おはおはー」

「おー。2人は今日も一緒に登校か」

「そりゃあ!」

「私達!」

「夫婦ですから!」

「「へーい!」」



 ハイタッチをする2人。

 例のことがあってから、2人の距離は更に縮まった。

 今では教室でもそのことは隠していない。

 赤い糸で結ばれてることも公言してるからか、みんな微笑ましいものを見る目で見ていた。



「それより暁斗。嫁ちゃんのこと見つめてどーしたんだよ」

「いや、竜宮院を見てただけだ」

「……浮気はやめとけ、暁斗。な? 嫁ちゃんが悲しむぞ」

「アッキー。嫁ちゃんというものがありながら、サイテー」

「違うわ」



 だから寧夏。そんな生ゴミを見るような目で見ないでくれ。ちょっと傷つく。


 ただまあ、さすがに竜宮院のことは相談できない。

 かと言って、俺らがどうにかできるもんでもないし。どうしたもんか。はぁ……。



「……? 暁斗、本当に大丈夫かよ」

「拾い食いでもしたんじゃないのん?」

「してねーよ。俺をなんだと思ってんだ、寧夏」

「……野生児?」

「今までの人生で野生児要素どこにもないんだけど」



 どこをどう見て野生児って思ったのか簡潔に頼む。


 ジト目で寧夏をねめつけるが、興味を無くしたのか自分の席に戻っていった。

 相変わらず、あいつは自由人だなぁ。



「サナたん!」

「おわっ!?」



 ちょ、耳元で叫ぶな! 鼓膜破れるかと思ったわ!


 慌てて振り返ると、満面の笑みの土御門がいた。

 梅雨時だと言うのに長袖のワイシャツを着ていて、数回折りたたんでいるが、暑くないのだろうか。



「サナたん、おっはっはー!」

「あ、ああ。おはよう、土御門」

「ひよりんって呼んでくれていいのにぃ」



 いつものやり取りをし、土御門は梨蘭の席に座った。

 まるで、あの時の告白が無かったかのようにいつも通りの土御門。

 俺も最初は戸惑ったが、慣れたもんだ。


 今ではよい友人関係を築けている。……と思っている。俺だけかもしれないけど。



「おー。土御門、ちすちすー」

「いえーい、クラたんちすちすー」



 最近はこうして、俺達と絡むことが増えた。

 当然、黒瀬谷達との交流も忘れず。ギャルのコミュ力高すぎ、怖い。


 土御門はカバンにしまっているチョコレートを取り出し、口に含む。



「太るぞ」

「ぶぅ。女の子は砂糖菓子でできてるから、甘いもの食べても太らないんです~。デリカシーのないこと言ってると、リラたんに嫌われちゃうぞ~? ま、ひよりとしてはその方がありがたかったりするけどねー」



 土御門は何でもないように言うが、一言一言が心臓に悪い。

 なんか、まだ俺のことを諦めきれてないみたいだし。ちょっと罪悪感というか。



「土御門、俺は……」

「わかってるよん。サナたんにも運命の人がいるもんねー。……でも」



 土御門は妖艶な流し目を俺に向ける。

 普段見せない土御門の表情に、思わずドキッとした。ごめん、梨蘭。何となく心の中で謝罪。


 土御門は俺の机に肘を置き、下から見上げるように見つめてくる。

 挑発するように。媚びるように。

 そして、誰にも聞かれないようにそっと耳打ちしてきた。



「ひよりの想いは、まだサナたんだけのものだから。ふぅー」

「ひぅっ……!?」



 ちょっ、耳に息を吹きかけるな……! 耳弱いんだよ俺……!



「あは☆ 耳で感じちゃうサナたん、かーわい♪」

「か、からかうな……!」

「ごめんなさーい」



 謝ってねーなこいつ。

 ……まあ、これが土御門だもんな。何か諦めた。


 俺は周りを見渡し、誰にも気づかれないように小声で話し掛けた。



「お前、まさか俺にフラれたこと根に持ってる? だからこんなことを……」

「違うよー。いやさー、ひよりも前を向いて、サナたんから卒業しようと思ったんだけどねぇ……中々想いっていうのは消えてくれないものなんだよぅ。だ、か、ら」



 ぴと。鼻先を指で弾かれた。



「もう少しだけ、この想いを大切にさせてくれると嬉しい……かな」



 楽しそうに、でも寂しそうに俺を見つめてくる土御門。

 土御門がそれでいいって言うなら、俺が止めることはないけど……。

 あと龍也。そのニヤニヤ顔やめろ、ひっぱたくぞ。


 そっとため息をつき。ふとある考えが浮かんだ。

 そうだ。龍也と寧夏に相談しても茶化されるか邪推されるとは思うけど……土御門に相談するのはどうだろうか。


 ……いいな。多分土御門は、親身になって相談に乗ってくれるだろう。よし、そうしよう。


 土御門に話し掛けようとする。

 と、そこに。



「おはよう、ひより」

「……あー。リラたん、おはおはー」



 さっきまで竜宮院と話していた梨蘭が、土御門の背後に立っていた。

 どことなく不機嫌な梨蘭と、強気なのか笑顔を崩さない土御門。

 な、なんか居心地が悪いんだけど。



「ひより。あき……真田と何話してたの?」

「えー? ただお友達として話してただけだよー?」

「……そう……もう三千院先生が来るわよ」

「あーい。じゃ、サナたん。またねん」



 にぱーと笑い、土御門は自分の席に向かっていった。

 相談は、あとでメッセージでも送るか。


 なんてことを考えてると、梨蘭がむーっとした顔で俺を見てきた。



「な、なんだ?」

「……ふん」



 そっぽを向かれ、俺を無視して席についた。

 何をそんなに怒って……ん? メッセージが……。



 梨蘭:浮気はダメだからねっ

 梨蘭:(犬が唸ってるスタンプ)



 あ……なるほど。俺と土御門が仲良く話してるのが気に食わなかったのか。

 ……可愛い奴だな。



 暁斗:安心しろ

 暁斗:俺が好きなのは梨蘭だけだ



 バッ──!!

 いきなり振り向いて来た梨蘭。

 その顔には、恥ずかしさとほんの少しの怒りが入り交じり、何とも言えない表情になっていた。



「ん?」

「~~~~っ! 知らないっ」



 はは。前にショッピングモールで迫られた時の仕返しだ。

 あの時の仕返しができ、ちょっとした愉悦に浸っていたところで、ちょうど三千院先生がやって来たのだった。

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