第43話
「お待たせ致しました。こちらブラックコーヒーと、ショコラムースと紅茶のホットになります」
俺と竜宮院の前に、注文した品が並べられる。
そして次に、店の奥から3人の店員さんが、信じられないものを運んで来た。
「お、お待たせ致しました。スーパーコスモ級ウルトラデラックスパフェ。通称、無謀パフェでございます」
「…………デカすぎんだろ……」
まず器からして、耐熱ボウルかと疑うほどデカい。
そこに様々なフルーツ、クリーム、お菓子が山のように積まれていて、一見すると宝石箱のような見た目だ。
透明の器の中までギッシリ。スポンジ、アイス、プリン、フレークなどなど。とにかく飽きさせない工夫が施されている。
こんなものが3つ、俺達の席に運ばれてきた。
当然目立つ。目立ちすぎる。
ほら、あそこの女子大生なんて写真撮ってやがるぞ。
でも気持ちはわかる。俺もついつい写真撮っちゃったし。
こんなの、滅多にお目にかかれるもんじゃないからな。
「へいへいへーい! こいつは食いごたえがあるぜ!」
「思ったより小さいねぃ。ま、仕方ないか」
こいつらの感覚バグってんのか。
2人がカレー用のスプーンでがっつくように食べる。
え、パフェってカレー用のスプーンで食べるようなもんだったっけ?
……まあこいつらはいい。これが2人の通常運転だからな。無視でオーケー。
問題は梨蘭の方だ。
無謀パフェの向こう側で、梨蘭の顔が青くなっている。
こいつが大食いって噂も聞いたことないし、やっぱり無理してるか。
「りら……久遠寺。あんま無理すんなよ」
「む、無理なんかしないわよ。これくらい余裕よっ」
2人と同じように、カレー用のスプーンで食べていく。
と、急に目を見開いて興奮したように頬を紅潮させた。
「〜〜〜〜っ! おいしい……これすっごくおいしいわ!」
どうやらお気に召したらしい。
ペースを崩すことなく、フルーツやアイス、生クリームを食べていく。その顔はまるでオモチャを買い与えられた子供だ。
隣に座る竜宮院も、微笑ましい目で梨蘭を見る。
……意外とこいつも食えるんだな。
これなら意外と──。
5分後。
「うえぇん……もーむりぃ……」
「いや早いわ」
驚くべき早さの降参。俺でなきゃ見逃しちゃうね。
無謀パフェはほとんど減っていない。というか、フルーツだけ食い尽くしやがったな、こいつ。
あとは生クリームとアイス、プリン、スポンジ、フレークと、甘ったるくて結構きついものばかりだ。
ペース配分も何も考えないからこうなるんだよ、全く。
「……久遠寺。食わないなら俺が貰うぞ」
「ふぇ?」
「見てたら腹減って来た。あと、せっかくのパフェを残すのも悪いしな」
店員さんにスプーンを1本貰い、梨蘭からパフェを奪って食う。
うっ……想像以上に甘ったるい。
「へぇ……そういうことね」
「何だよ、龍也」
「別に? 我らが暁斗君はお優しいと思ってな」
うっせ。
熱くなる頬を冷ますように、アイスを食べる。ぐぅっ、頭キーンッ……!
「……ぁっ。か、勝手に食べんじゃないわよ!」
「だってお前食えないだろ。なら俺が貰う」
「食べられるわよ! 食べられるもん!」
俺の前に置かれていたパフェを自分に引き寄せ、俺達の丁度真ん中に置く。
梨蘭は一瞬えずいたが、俺に負けじと食べ進めていった。
「ふふふ。梨蘭ちゃん、真田君。こっち向いて」
「ん?」
「何よ?」
パシャッ。
……あ。写真?
……撮られた!?
「ちょ、璃音!?」
「いきなり撮るなよ……」
「ごめんなさいね。2人が幸せそうだったから」
「そうだよアッキー。まるでカップルみたいだったよん」
「やっぱり2人っていいコンビだよなぁ」
ぐっ……からかうなよ、ったく。
ほら、梨蘭だって困って──。
「あうあうあうあう……かかかかかかぷぷぷぷぷ……!?」
訂正。困惑してるわ。
「ぅぅっ……! 真田!」
「俺にキレるな……」
「うっさい! アンタのせいだから、責任もって全部食べなさい! こ、こんなみんなの前で、1つのものを食べ合うって……! か、かっぷ……る……ううううう!」
「いだっ! ちょ、スネ蹴んなよ!?」
てかこいつ、さり気なく全部押し付けてきやがった!
いや、あと半分以上残ってるんだけど!?
結局、3分の1を残してギブアップ。
最後は寧夏に全部食ってもらった。
やっぱり寧夏は凄い、改めてそう思った。
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