表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Web版】俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件  作者: 赤金武蔵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/243

第26話

「ちょ、やっぱまずいですって。いくら風邪とは言え女の子の部屋に行くのは……!」

「いいからいいから。お姉ちゃんが許可を出してしんぜよぅ」



 いや、あんたの許可が出ても久遠寺の許可がないと……!


 背中をグイグイ押されて2階に連れられる。

 階段を昇って右側には【KA☆RU☆RA】のプレートが掛けられた扉。

 左側には【♡梨蘭♡】のプレート。こっちが久遠寺の部屋か。



「リーラー? 入るよー?」

「ちょっ、やっぱ俺……!」

「まあまあ、いいからいいからっ」



 よくないよ!?


 扉を開け放ち、無理やり部屋に突入。

 直後、鼻を突く芳醇で濃厚な匂い。

 いつも僅かに香っていた、“久遠寺梨蘭”という香りが充満した部屋に……俺の思考はショートした。


 カーテンを閉めてるのか薄暗い部屋は、ファンシーと言うかメルヘンと言うか。

 パステルカラーの絨毯に家具、ぬいぐるみ、小物。


 とにかく久遠寺らしくない、可愛い内装だ。


 そんな“久遠寺梨蘭”の領域に無断で入ったからか、俺らが騒々しかったからか(多分後者)。



「ん……っ……おねーちゃん……?」

「ッ!」



 この部屋の主が目を覚ました。

 相当辛いのか、薄暗い部屋でもわかるくらい顔は真っ赤で。

 デコにはひんやりシートを付け。

 それでも暑いのか胸元のボタンが大きく開けて汗ばんだ谷間が……って! ノーブラかよこいつ!? せめてキャミソールくらい着ろ!



「リラ、愛しのアキト君が来てくれたよん」

「茶化すのはやめてくださいよ……!」

「……あきとくん……さなだ……?」



 焦点のあってない目が俺を見つめる。

 だ、大丈夫か、こいつ? 本気で心配になるくらい体調悪そうなんだが。



「よ、よう、久遠寺」

「………………あぁ、そっか。ゆめかぁ……」



 ……夢? まさか、俺がここにいるのを夢だと思ってるのか?



「そーよ……だってさなだがここにいるはずないもの……ふふふ、そっかぁ……」



 とろんとしたような、うっとりしたような顔の久遠寺。

 これは熱によるものなのか、それとも夢見心地なのかわからないが……いつもは見せない表情だ。



「! ぬふふふふ。そいじゃアキト君。あとよろすく〜」

「えっ。ちょっと……!」



 ……行っちまった。

 こんな所に置き去りにされても……。



「さなだ」

「っ……な、なんだ?」

「こっちきて」

「え、いやそれは……」

「くるのー」



 幼児退行してますよ久遠寺さん。

 だけど、ここで渋って泣かれてもそれはそれで居心地が悪い。

 諦めて近付き、ベッドの横に立つ。

 と、久遠寺が無理にでも起き上がろうとした。



「ちょっ、寝てろって。風邪引いてんだから……!」



 肩を抑えて寝かせる。

 だが久遠寺は起きたいらしく、むーっとした顔で手足をぱたぱたと動かし。



「はーなーせー」



 いやマジでガキか。

 動画撮っといて後で送り付けてやろうか。



「いいから、寝てなさい。少しは側にいてやるから」

「……すこしだけなの?」

「え?」



 く、久遠寺、何を……?



「ずっとじゃないの……? ずーっと、いっしょにいてくれるんじゃないの……?」



 あ、やべ、泣きそうだこいつ。

 ……まあ、夢って思ってくれてるわけだし……今は少し、素直になってもいいか。



「……当たり前だろ。ずっと一緒だ」

「ほんとっ?」

「ああ。俺達は『運命の赤い糸』で繋がってんだ。ずっと一緒にいよう」

「……ふひ……ふひひっ。えへへ……」



 俺をチラ見しては笑みを浮かべ、またチラ見しては笑いをこぼす。


 ……なんか、こう見ると運命の人ってより、妹みたいだ。

 そういや琴乃も、昔風邪引いたときはこんな感じだったっけ。側にいてやらないと、寂しくてよくぐずったもんだ。


 まあ、どれだけ妹みたいと言っても、目の前にいるのは風邪で弱った運命の人。

 ぶっちゃけ無防備すぎて俺の精神衛生上、毒でしかない。



「ね、眠るまでここにいてやるから、早く寝な」

「ん……ありがと……ねぇ、さなだ……」

「何だ?」

「……て、にぎって」



 ………………………………え。

 な、なん……だと……!?

 て、手を握るって、それって……さ、さわっ、触るのかっ、こいつに!?


 脳裏に過ぎるのは、屋上前の踊り場でのこと。


 少し触れただけで走った衝撃は、今でも忘れない。

 あのことがあったから、なるべく触れないようにしてたんだが……。



「だめ……?」



 曇りのない純粋な瞳……!

 これは……い、致し方ない……。



「……ほれ」

「! ん……」



 久遠寺の手が、ゆっくりと俺の手を握る。



「────ッ!!」



 来、た……! あの時の衝撃……!

 触れた部分の神経が剥き出しになり、電気のようなものが頭の先からつま先まで突き抜ける……!



「……さなだのて、おっきぃ……おちつく……」



 や、やめろぉ! もにもにするなぁ……!



「い、いいいいいいいから寝なさい……!」

「ん……おやすみ……」

「お、おおおおう。お、おやすみ……!」



 久遠寺の目が閉じられ。

 相当辛かったのか、直ぐに寝息を立てて意識を失った。


 そっと、手を離すと……よ、よかった。本当に寝てるみたいだ……。


 ドッドッドッドッ──!


 心臓が今までにないほど早く鼓動する。

 こいつはまずい……一刻も早く帰らないと……!


 急いで部屋を出て階下へ向かう。

 と、廊下にいた迦楼羅さんが壁に背を預けてニヤニヤ顔で立っていた。



「にゅふふふふ。うぶだねぇ、少年。顔真っ赤よ」

「ぐ……か、帰ります。お邪魔しました」

「あいあーい。また来てねん」



 しばらくはゴメンです。

 靴を履いて扉に手を掛けると、迦楼羅さんが「あ、そうそう」と声を掛けてきた。



「アキト君や」

「……何すか」

「おや、警戒されてる。でもそんなけいかいすることないよ。1つ、お願いするだけだから」



 お願い?

 迦楼羅さんは俺に近付く。

 すると、背伸びをして俺の頭に手を乗せてゆっくりと撫でてきた。

 まるで、本当の姉のように。



「リラは強いけど、脆い子なんだ。君が是非とも支えてあげてね」

「……うす」



 気恥しさを隠すように急いで玄関を潜ると、足早に家へと帰って行った。


 夕日が俺を照らす。


 が、俺の顔の火照りは……間違いなく、夕日のせいではないだろう。

【評価】と【ブクマ】が済んでいないという方がいましたら、どうかお願いします!


下部の星マークで評価出来ますので!


☆☆☆☆☆→★★★★★


こうして頂くと泣いて喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 甘い…(*´ω`*) 幼児退行って本音が出るし、仕草も子供っぽくなったりして可愛くなるなぁと再確認した今回であった(*つ▽`)っ
[一言] 砂糖吐いたんだが(´ཫ`)‬
[一言] 幼児退行可愛すぎか…!!!!!!!!!!!!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ