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【Web版】俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件  作者: 赤金武蔵


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第21話

   ◆



 月曜日は憂鬱な日というらしい。

 父さんも、月曜日は憂鬱そうな顔でいつも会社に行っているが……今日ばかりは俺が鬱である。



「暁斗、元気なくねーか? 月曜だぜ、アゲアゲで行こう! へいへいへーい!」

「へいよう、ようよう!」

「お前ら人の気も知らんで」

「「知らね(笑)」」



 うっぜ。


 いつもと変わらない龍也と寧夏とのやり取りに、ほんの少しだけ鬱も和らいだ。

 けど……そういや、まだ久遠寺の奴来てねーな。糸の感じからして、移動はしてるみたいだけど。



「あれれー? アッキー、リラがいなくて寂しい感じ?」

「んなわけねーだろ」



 図星過ぎて食い気味に否定してしまった。

 まあ、いつもこんな感じだから、2人共なんの疑問も持たなかったらしく、スルーされた。


 いつも通り2人とバカ話で盛り上がる。

 と、今度は竜宮院がこっちにやって来た。



「真田くん、梨蘭ちゃんちょっと遅れるって」

「何でそれ俺に言うんだ……」

「だってお嫁ちゃんでしょ?」

「だから違うって言ってんでしょうが」

「ふーーーん」



 楽しそうにくすくす笑い、竜宮院は自分の席に戻って行った。

 龍也と寧夏はともかく、竜宮院は俺と久遠寺の関係を知っているからやりにくい……。



「ほらー。リラの親友のリオにまで嫁認定されてんじゃんー」

「これはもう確定ですなぁ」



 ニヤニヤ、によによ。

 腹立つなこいつら。


 2人の頭を綺麗に叩くと、今度は教室に入ってきた土御門が軽やかな足取りで近付いて来た。



「サナたん、おっはー」

「あ、ああ。おはよう土御門」



 土曜日の1件があったから、気まずい……。



「クラたんもネイたんもおっはー。へーい」

「へーい土御門。おっはー」

「ひよりん、おはおはー」



 龍也と寧夏とはハイタッチしながら挨拶する。

 相変わらずのコミュ力怖い。



「およ? クオたんまだ来てないの?」

「……みたいだな」

「どしたんだろーね」



 白々しいな、おい。

 土御門は久遠寺がいないのをいいことに、我が物顔で久遠寺の椅子に座った。

 それを見た龍也が「ん?」と首を傾げる。



「珍しいな、土御門がこっちに絡むなんて。黒瀬谷達はどうした?」

「んー? 勿論後でみんなのところ行くけど、今はサナたんとお話したい気分〜」



 俺はそんなことない気分〜。

 だが龍也と寧夏は別の意味で捉えたらしく、まっと口を手で覆った。



「聞きましたかリューヤくんや」

「聞きましたよ寧夏さんや」

「これは私達はお邪魔みたいですわね」

「あとはお若い2人に任せましょう」



 相変わらず息ぴったりですねお前ら。

 2人はニヤニヤしながら、俺と土御門から離れていった。

 今そんな気遣いいらないんだよなぁ。

 土曜日のことを考えると、あんまりこいつといたくないんだよ……。



「にゅふっ。2人っきりだねぇ、サナたん」

「げ、厳密には教室だから、2人っきりではないぞ」

「他の人なんてどーでもいいの。私は君と一緒にいられることが、何よりも幸せなんだから」



 熱っぽい視線に、上気した頬。甘く、脳を痺れさせる魅惑の声。

 その全てに思わず見とれてしまった。



「ねえサナたん。あのお話、ちょっとは考えてくれた?」

「あ、あのお話? なんのことでせう?」

「もう。わかってるくせに……照れちゃって、可愛いんだ」



 緩くウェーブのかかった桃色のロングヘアーの毛先で、俺の鼻先をいじる。

 甘いピーチの香りがし、毛先まで完璧に手入れされた髪はまるで職人の作ったハケのような気持ちよさ。


 まるで触れられた場所の神経が剥き出しになって、甘くとろけるような感覚に陥った。



「えと……あの……」

「ねえ、今日放課後。校舎裏来て。絶対ね」

「え……」

「ふふ。じゃねー」



 萌え袖フリフリ。上機嫌に鼻歌を歌いながら、土御門は黒瀬谷達の所へ向かった。

 本当、嵐のような奴だったな……。


 と。丁度ホームルームのチャイムが鳴り、三千院先生が教室の前から入ってきた。


 眼鏡巨乳美人+ポニーテール女教師という男の夢みたいな女性。

 しかし礼節に厳しく、キリッとした雰囲気で男女問わず人気を集めている。


 そんな三千院先生が、鋭い菫色の目で教室を見渡し……珍しく首を傾げた。



「あら。久遠寺さんはまだ来ていないのかしら」

「あ、先生。さっき梨蘭ちゃんから連絡があって、少し遅れると──」

「すみません遅れました!」



 あ……久遠寺……。

 竜宮院の話を遮り、教室に入ってきた久遠寺。当然みんなからの注目の的だ。



「大丈夫ですよ、久遠寺さん。まだ始業前ですので。……ですが珍しいですね。あなたがギリギリになるなんて」

「す、すみません。昨日夜遅くまで起きていて……」

「勉強ですか? あまり無理はしないでくださいね」

「はい……」



 ……確かに、いつもより顔色が悪い。

 だけど、それでもあの久遠寺が寝坊するなんて……。



「久遠寺さん、席に座ってください。諏訪部委員長、号令を」

「はい。起立、気を付け、礼。おはようございます」

「「「おはようございます」」」



 結局、久遠寺と話ができないままホームルームに突入したのだった。

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