第211話
「……おい」
「あ、これいい……」
「リラたんに似合うかもー」
「ええっ。でもこういうのって、ひよりに似合うわよ」
「リラたんならなんでも似合うよー。素が可愛いからねー」
…………。
「おいコラ」
「あ、このスカートはひより! 絶対ひより!」
「ええ? ふわふわすぎないー?」
……………………。
「おいコラ無視すんな」
「むぅ。何よ暁斗、うっさいわね」
「いや、うん。話に割り込んで大変申し訳ないけどさ……まだ買うの?」
俺の両腕には大量の紙袋。数にして15は下らない。
全部梨蘭とひよりの買った荷物だ。
どんだけ買おうと2人の自由なんだけどさ……ついこの間、モデル料も入って来たし。
「何言ってんのよ。まだまだこれからじゃない」
「まだまだなのか……」
いやまあ、重くはないからいいんたけどね。
そっと嘆息すると、朝彦が困り顔を浮かべていた。
「あはは……やっぱり僕も持ちますよ、暁斗さん」
「あーいや、別に重いわけじゃないんだ。それより朝彦は大丈夫か? 疲れてないか?」
「ええ、大丈夫ですよ。ご心配ありがとうございます」
とか言っても、少し疲れが見えるぞ。
女子2人は買い物に夢中で気付いてないみたいだしなぁ。
再度ため息を吐く。
図らずも朝彦も同時にため息をついた。
思わず顔を見合せ、どちらともなく笑う。
「お互い、可愛い彼女を持つと大変ですね」
「だな」
そんなところも可愛く、愛おしく思える。
俺、心底梨蘭のこと好きなんだなぁ。
当たり前のことを自覚してると、ようやく2人が戻ってきた。
「アサたん、サナたん。ただまーっ」
「ごめんね、待たせちゃって」
「おー、おかえり」
案の定、また荷物が増えてらっしゃる。
女の子って本当に買い物が好きだよなぁ。
「さて、次どこ行こうかしら」
「待て待て。いい加減朝彦の行きたい場所に行こうぜ。今日は一緒に遊ぶのを目的にしてんだしさ」
「あ。それもそうね。ごめんなさい、朝彦君」
「い、いえ。僕は大丈夫ですから。……ぁ」
ん? 朝彦、どこを見て……あ。
「ゲーセンか」
「これが噂のゲームセンターですかっ?」
「噂って、来たことないのか?」
「はい! ずっと寝たきりだったんで!」
そんなキラキラした笑顔で言われても反応に困るんだが。
「なら、行ってみるか」
「いいんですか!?」
「おう。2人もいいよな?」
「勿論よ」
「行こ行こー!」
◆
荷物をコインロッカーに預け、ゲーセンへとやってきた。
この辺では最大規模のゲーセンで、カラオケやボウリング、ビリヤード、バッティングセンター等なんでもある。
景品が出る期間には、龍也や寧夏と一緒に来て荒稼ぎしている。
まあ、そのせいで一時期出禁食らってたんだけど。主に寧夏のせいで。
ここ最近は忙しくてゲーセンにも来てなかったからなぁ。この喧騒。この空気。久々だ。
どれで遊ぶか聞こうとすると、梨蘭が物珍しそうに見渡した。
「へぇ。ゲーセンって結構綺麗なのね」
「ん? 梨蘭も初めてか?」
「ええ。ゲームに興味ないし、なんとなくガラの悪い人が来るイメージで」
「昭和か」
場所にもよるだろうけど、ここは治安のいいゲーセンだ。
女の子だけのグループもいれば、小学生もよく遊びに来ている。
今どきガラの悪い奴らがたむろすることもない。
「で、どうだ朝彦? 何かやりたいものはあるか?」
「…………」
「……朝彦?」
「……これが……これがゲームセンター……! 遂に来れた、憧れの理想郷……!」
「いや大袈裟だな」
「大袈裟じゃありません!!」
うおっ!? ちょ、顔ちけぇ……!
「今まで僕がどれほどベッドの上でゲームをして来たと!? どれほどのゲームをやり込み、どれほどのやり込み要素を完クリし、どれほどの闇堕ちを経験し、どれほどの世界を救い、どれほどの姫を救ってきたと!?!?」
「ごめんなさい」
思わず素で謝ってしまった。
だだだだだって目がガチなんだもん。怖いんだもん。ぴえん。
「わかっていただければいいのです」
腰に手を当て、むふーと得意げにする朝彦。
こいつは猛者だ。
いいや、猛者なんて言葉じゃ生ぬるい。
朝彦。この男……修羅だ(ごくり)。
「男って馬鹿ばっか」
「そんなところも可愛いけどねー」
「わかる」
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