第209話
◆
「死ぬかと思った」
「大袈裟ね、暁斗」
大袈裟なもんか。他のお客さんがいる中、30分にも渡って褒め殺しにあったんだ。精神的ダメージは計り知れんぞ。
げっそりしている俺。
そんな俺を見て、朝彦は気まずそうに笑った。
「あはは……ご、ごめんなさい、暁斗さん」
「アサたん。サナたんの扱いは基本こんな感じだから、気にしなくていいんだよー」
「そうなのですか?」
「そうなのー」
「そんなわけなくない?」
何しれっと俺の扱いを刷り込んでるんだこいつは。
おいコラ、「てへぺろ♪」じゃないんだよ。
喫茶店を出た俺達は、とりあえず駅中の百貨店に向かった。
「この中、基本的になんでも揃ってるんだ。と言っても、朝彦にとっては珍しくもないと思うけど」
なんと言ってもジョーテラの御曹司。
こんな所よりも、超高級百貨店に行ってるだろうしな。
「…………」
「……朝彦?」
「〜〜〜〜ッ!(おめめキラキラ〜)」
なにごと!?
興奮したようにあっちこっちを見渡す朝彦。
その姿はクールなイケメンというより、まるで少年のようだった。
「言ったでしょー。アサたんは病弱だったってー」
「え、治ったんだろ?」
「うんー。でも1人で外を回るのは許されなかったんだってー。いつ倒れるかわからないからねぇー。同い歳との外出って、今回が初めてらしいよー」
そう、だったのか。
だからあんなに嬉しそうな顔をしてるんだな。
「楽しいか、朝彦?」
「はいっ! 友達とウィンドショッピングするの、夢だったんです!」
夢がささやかすぎて泣ける。
そうかそうか。大変だったんだな、こいつも。
朝彦とひよりが前を歩き、俺と梨蘭がそれについて行く。
ひよりがあれこれ説明するのを、朝彦はどれも目を輝かせて聞いていた。
「お似合いね、あの2人」
「ああ。なんだかんだ、ひよりも朝彦のこと好きっぽいし」
「あら。あの鈍感大魔王の暁斗も、わかるようになったわね」
「ディスがすぎる」
鈍感は認めよう。でも大魔王まで付けられる謂れはない。
……え、そうだよね?
2人の後を追いつつ、遠くから眺める。
ミステリアスイケメンと、ゆるふわ美少女ギャル。
異色の組み合わせだが、こうして見ると型にハマっているようにも見える。
見ようによっては、陰キャオタクと陽キャギャルって感じだ。
久々に、俺の中のオタの血が騒ぐ。いいぞ、もっとくっつけ。
「アンタ、また馬鹿なこと考えてない?」
「俺がいつも馬鹿なこと考えてるような言い方やめて」
図星だから何も言い返せないけど。
見ると、ひよりがアクセサリーを手に取り、朝彦がそれを絶賛している。
ひよりも頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「よかったわね。ひより、好きって気持ちが湧かないって言ってたけど」
「そうだな。実際に会ってみないと、わからないことの方が多いだろうし」
むしろ頭に思い浮かんだ顔だけで、相手の全てを知るなんて無理だろ。
そんな2人を見ていると、梨蘭が「でも……」と渋い顔をした。
「どうした?」
「……あの2人、なんで朱色の糸なのかしら? 朱色って、経済的相性抜群の色でしょ?」
……確かに?
なんであの2人が、経済的相性抜群なのかわからないな。
言ってはなんだけど、ひよりは休日に補習を受けるくらいには頭は残念だ。
じゃあなぜ2人が朱色の糸なのか?
…………。
「可能性の話だが」
「聞きましょう」
「……俺らが関係してるとか」
「どういうこと?」
「俺らって濃緋色だろ。そんな俺らがこの2人に関係する運命だったから、こいつらは朱色の糸なんじゃないかって」
「あはは、そんな馬鹿な」
…………。
「「有り得るなぁ……」」
びっくりするくらい納得してしまう。
今までのことを考えたら、これくらいやっちゃいそうだもん、濃緋色の糸さん。
なんとなく遠い目をしていると、俺らの異変に気付いた2人は、揃って首を傾げた。
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