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【Web版】俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件  作者: 赤金武蔵


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第174話

 9月中旬。

 少しだけ季節がすぎ、夏の暑さもなりを潜めた頃──



『正々堂々!』

『力の限り!』

『戦い抜くことを!』

『『『誓います!!』』』



 ──銀杏高校、体育祭が始まった。


 赤、白、青の昼花火が上がり、生徒たちのボルテージも上がる。

 派手だなぁ、高校の体育祭ってのは。


 隣にいる龍也も、他の生徒に混じって大声を上げている。



「へいへいへーい! やっぱイベントはこうでなきゃな!」

「龍也、テンション高いけど、寧夏と別でよかったのか?」

「まあ仕方ねーだろ。こうなったら楽しんだもん勝ちよ! へいへいへーい!」



 前向きだな、こいつ。


 俺と龍也は青組のため、頭には青い鉢巻が巻かれている。

 周りも青組だが、正直知らない奴らばかりだ。


 まあ別クラスなんてほとんど交流はないし、ましてや2、3年にもなれば余計知らない。誰だこの隣の3年生。


 開会式も終わり、自分の席に戻る。

 周りを見れば自由気ままに席を移動したり、イケイケグループは前の方に行って観戦したりしていた。

 あ、龍也もいる。



「へーいアッキー!」

「お?」



 背中をてしてし叩くこの感覚は。


 振り返ると、ブカブカのジャージを着ている寧夏。シャツの裾を結び、形のいいヘソを出しているひより。そして赤い鉢巻をカチューシャのように巻いている梨蘭がいた。



「おー、どした?」

「ウチとひよりんはこれから徒競走だよん。応援ヨロ」

「ヨロヨロ、サナたん!」

「いや別チームなんだけど」

「いいじゃん、減るもんじゃなし!」

「俺らのチームの点が減るでしょうが」



 全く、こいつらは……デコピンくらえ。



「おょっ?」

「にゃっ!」

「ま、頑張れよ。ひっそりと応援くらいしてやるから」



 あくまでひっそりとな。

 2人はにひーっと笑うと、アゲアゲのテンションで集合場所に走っていった。



「で、梨蘭はなんでここに?」

「何よ、悪い?」

「いや、悪くはないけどさ」



 競技の時くらいは、自チームの応援席にいた方がいいと思うけど。


 梨蘭は周囲を見渡すと、そっと俺の傍に寄り添って服の裾を摘んできた。



「い、いいじゃない。応援くらい、傍にいたって……だめ?」

「うぐっ」



 そう言われて、ダメって言えるはずないだろ。



「あー……周りの人に迷惑かけなきゃ、いいんじゃないか?」

「えへへ。ありが──」

「いやダメに決まっているだろう」

「「っ!?」」



 あ、薬師寺先輩。

 いつの間にか後ろにいた薬師寺先輩は、青い鉢巻を巻いて腕を組んでいた。


 この人、俺と同じチームだったのか。

 それにしても見事な絶壁。ぺったんぺったんぺったんこ。



「今何かとんでもなく無礼なことを考えなかったか?」

「キノセイデス」

「こっち見ろ小僧」



 ちょっと待ってアイアンクローはやめいだだだだだだだだだだだだだだ痛い痛い痛い剣道部握力エグいてっ……!

 あとナチュラルに人の思考読まないで……!



「や、薬師寺先輩っ、こんにちは!」

「やあ久遠寺さん、こんにちは。しかし今日は敵同士。手は抜かないからね」

「は、はい! 私も負けませんっ!」



 龍虎相見える。2人の背後に幻覚が見えるみたいだ。

 てかそろそろ手を離してくれませんかね?



「だが久遠寺さん。いくら学校のイベントで恋人と一緒にいたいからって、これは体育祭。言わば勝負だ。敵チームの相手と一緒にいるのは看過できないな」

「うぐ……はぁい」

「ふふ、いい子だ」



 うんうん、物分りがよくて助かるよ。

 あと、そろそろ手を離して(略)。



「ほら、そろそろ戻るんだ」

「はーい。それじゃあ暁斗、お昼ご飯は一緒に食べましょうね」

「おう。またな」



 昼飯は自分のクラスだから、その辺は問題ないだろう。

 手を振る梨蘭に、俺も手を上げて返す。


 その後ろ姿を見送ると、薬師寺先輩はそっと嘆息した。



「全く、君達は……二人揃うと何が起きるかわからないんだから、競技中はなるべく接触しないように」

「うす」

「わかればいいんだ、わかれば。さあ、一緒に我が青チームを応援しようじゃないか!」



 わかった、わかったからそろそろ手を離し(略)。


 ようやく解放され、薬師寺先輩と応援席の前の方に向かうと、丁度徒競走女子の部が始まった。


 1組6人で50メートルを走り、順位を決めていく競技。

 どの組も中々の接戦だ。


 と、そんな中一際ミニマムな女子が現れた。



「お? あれは十文寺じゃないか」

「あー、じゃあこの組は十文寺の一人勝ちっすね」

「わからないぞ。確か隣にいる青組の女の子は陸上部だったはずだ」



 陸上部ねぇ。


 体育祭実行委員の人が、スターターピストルを掲げる。

 そして。



「よーい──」



 パンッ!!



 スタートした。

 クラウチングスタートから、一斉に駆け出す6人。

 が、やっぱり。



「お、おおっ! はえー!」

「あのちっちゃい子、すごい速いわ!」

「あんなやつこの学校にいたんだ……!」

「すげー!」



 予想通り寧夏の独走。

 余裕をもって一着でゴールした。



「あいつ、50メートル走なら6秒前半のタイムなんですよね」

「あぁ、そういえば叱る時もすごくすばしっこかったな……」



 ホント、あのミニマムな体のどこにそんなエネルギーがあるんだか。



「へいへいへーい! さっすがネイ! 愛してるぜーーー!」

「イエーイ! ウチもりゅーやを愛してるぜーーー!」

「「「「フゥーーーーーー!!!!」」」」



 あいつら、隠す気ゼロだな。



「全く、悪ガキが……あとで説教だな」



 南無三。

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