第150話
「以上で、プレゼンを終わります。どうでしょうか?」
どうでしょうかと言われても。
うーん……ここまでガチガチにプレゼンしてくるとは思わなかったから、正直心惹かれてるところはある。
龍也と寧夏の幸せそうなところも見ちゃったし、それに感化されているのも本音だ。
それに俺と梨蘭は、濃緋色の糸で結ばれている。
同棲を始めたら、幸せになるのは間違いないだろう。
うぐぐぐ……。
「暁斗……」
梨蘭が同棲したそうにこちらを見ている。
…………。
「わ……わかった」
「「やったー!!」」
梨蘭も諏訪部さんも、諸手を上げて万歳した。
こんなにされて、梨蘭にまであんな顔されたら、俺が拒否することなんてできないって。
「でも、同棲するにしても俺と梨蘭の両親に許可を取らなきゃダメだろ」
「あ……確かにそうね。盲点だったわ」
「盲目すぎない?」
どんだけ俺と同棲したいんだこの子。
……いや俺もしたいけどね? それでも色々リスクとか考えちゃうわけですよ。
考えてもみなさい。ノーマルな赤い糸で繋がっている龍也と寧夏でさえ、同棲したらあーんなことや、こーんなことをしてるんですよ。
それを、濃緋色の糸で結ばれている俺と梨蘭が同棲してみろ。
とっっっっっっっっっっっってもセンシティブです、ありがとうございます。
ってありがとうございますじゃねーわ!
それに、同棲するにしても学校側にバレないようにしなきゃならないし……ダメだ、考えることが多すぎる。
どうするか頭を悩ませていると、諏訪部さんがパンッと手を叩いた。
「大丈夫です。ご両親に関しては、問題ありません」
「え?」
問題、ない?
諏訪部さんがタブレットを操作すると、また1つの画面を映し出した。
今度は映像じゃない。これは……ミーティングアプリだ。最近話題になってるのをテレビで見た。
『やあ、仁美。思ったよりスムーズに話し合いが進んだようだね』
「はい、お父様。それで、こちらが私を助けてくれた真田暁斗さんと、久遠寺梨蘭さんです」
お父様……お父様!? え、まさかっ。諏訪部不動産の社長!?
初老というほどでもないが、ひげを生やしたダンディなおじ様といった風貌。
この人が、諏訪部不動産の社長……。
『初めまして。仁美の父です。この度は仁美を救っていただき、本当にありがとう』
「い、いえっ。ぐぐぐ、偶然その場に居合わせただけなので……!」
やっべぇ。まさか大会社の社長と話すことになるなんて……!
いや、それなら寧夏のお父さんとも話したことあるけど。それでもあっちは、中学の頃から面識はあった。初対面の大会社の社長と話すのは、実質初だ。
『仁美から色々と聞いていると思うが、今テレビ通話をしているということは、我々からのお礼の品を受け取ってくれると……そういう認識でよいかね?』
「は……はい。そう、ですね……」
『それで、両家のご両親に許可を取らなければならないことを危惧している。あっているかい?』
まるで今までの会話を聞いていたような言葉に、俺と梨蘭は思わず黙ってしまった。
これが大会社の社長。すごい洞察力だ。
『沈黙は肯定と受け取るよ。なら、これから許可を取ればいい』
え、これから?
首を傾げていると、もう1人ミーティングアプリに入って来た。
それを諏訪部さんが許可すると。
『やあ、暁斗。梨蘭さん、この間振り』
「え、父さん?」
「お、お義父さん……?」
なんで父さんがここに? どういうことだ?
『や、真田君。元気そうだね』
『社長もご健勝そうで何よりです』
『おいおい。社長はよしておくれよ、私と君の仲じゃないか』
『いえ。昔はともかく、今は社長に雇われている身ですから』
社長? 仲? 昔? 雇われ?
……って、ことは……?
「と、父さん、諏訪部不動産で働いてるのか!?」
『そうだよ。これでも、諏訪部不動産日本支部支部長なんだ』
何それ聞いてない!?
まさかの事実に驚愕。しかもさっきの言葉からすると、昔馴染みっぽいし。
どんだけ世間は狭いんだ、これ。
「それでは、もうお1人招待致します」
この流れって、あの人だよなぁ。
諏訪部さんが許可をし、画面に映ったのは。
『やあリラ! パパだよー!』
「ああ、やっぱりパパだったのね」
『おいおい、酷いじゃないか。あぁ、暁斗君も久しぶりだね!』
「はい、お久しぶりです」
今ここに、諏訪部さんのお父さん、梨蘭のお父さん、俺の父さんが揃ったのだった。
何これどういう状況?
『やあ、久遠寺君、元気そうじゃないか』
『諏訪部君こそ、相変わらず景気はいいみたいじゃないか! 老けたけどな!』
『お互いにね』
……この2人も知り合いっぽいな。社員じゃなさそうだけど、どういう関係だ?
首を傾げていると、諏訪部さんが3人の関係を説明してくれた。
「真田くん。父と真田くんのお父様は高校時代の友人で、父と久遠寺さんのお父様は大学時代の友人だったそうです。真田くんのお父様と久遠寺さんのお父様は、その伝手で最近お知り合いになったそうで」
「……マジ?」
「はい。私も驚きました」
マジか……。
『そうだよ暁斗君! まさかとは思ったが真田さんの息子だったんだなぁ、君は! 似てないな!』
『暁斗は母親似ですから』
『なるほど! 今度は是非、家族ぐるみで食事をしたいものだね! 真田さん、セッティングをお願いできるかい?』
『もちろんですとも』
なんか俺らの許可も取らず勝手に話が進んでる!?
と、そんな盛り上がっている2人を落ち着かせるように、諏訪部社長が咳払いをした。
『ふふふ。お2人共、本日は彼らが主役ですよ』
『申し訳ありません、社長』
『そうでしたな。それで、リラ、暁斗君。お願いというのはどういうものかな?』
ぐ……こ、ここまですごい人達が集まってるんだ。もう後には引けないか。
梨蘭を横目で見る。梨蘭も俺を見て、どちらともなく頷いた。
「あ、あのっ。えっと……と、父さん。それに梨蘭のお父さんっ」
一回、深呼吸を挟み。
「り、梨蘭との同棲の許可をください!!」
「わ、私からもお願いします!!」
2人揃って、頭を下げ——
『ああ、いいよ』
『うむ! 問題ないぞ!』
いやめっちゃ軽いっすね2人とも!?!?
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