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【Web版】俺の『運命の赤い糸』に繋がってたのは、天敵のような女子だった件  作者: 赤金武蔵


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第10話

 目尻が釣り上がり、眉も逆八の字になって琴乃を睨み続ける久遠寺。

 何をそんなに怒ってるのかはわからんが……琴乃には前にも会ってるよな……?


 そんなの怒髪天を衝く久遠寺の後ろには、めっちゃニヤニヤしている竜宮院が。

 なんだか面倒なことになったなぁ……。



「ねえお兄。梨蘭たん、私見て怒ってない?」

「あ、ああ……そうだな」

「……ん? んん? ……ははん、そういうこと……」



 何かわかったのか、怪しい笑みを見せる琴乃。

 こいつ、絶対ろくでもないこと考えてんな。



「お兄。これから何があっても、何も口出ししないでね」

「え?」

「ここは私が奢るから」

「乗った」

「うわーお兄クズいなぁ」



 人の金で食うチーズインハンバーグが1番美味いからな。

 そんな話をしてると、外にいた久遠寺が大股で店の中に入って来た。



「いらっしゃいませ、おきゃ……ひっ!?」



 おい店員を怖がらせるんじゃねーよ馬鹿。

 ツカツカツカツカツカ。一直線に俺達の方へ来ると、俺と琴乃の前で腕を組み、仁王立ちした。


 そんな久遠寺を前に、琴乃は落ち着いた笑みを浮かべる。



「あら、どちら様かしら?」



 ……え、琴乃? 何その言葉遣い、似合ってないぞ。



「っ……アンタこそ誰よ」

「私? そうだなぁ……彼の大切な人、かしら」



 まあ間違ってはない。けどその含みのある言い方はどうにかならんのか。

 てか久遠寺、マジで琴乃って気付いてないのかよ。

 まあ、あの時より大人っぽい服装で髪型も違うからな……そりゃそうか。


 ……あれ? そういやあの時もこんな突っかかり方してたような……?



「た、大切な……!? さ、真田……アンタ……!」

「ま、待て久遠寺。こいつは──むぐっ」



 喋ろうとすると、琴乃が俺の口を人差し指で塞いだ。おい何だこの指は、ぺろぺろすんぞ。



「アキ君。ここは私に任せて、ね?」



 こいつ、面白がってやがる……。



「あっ……ああああああああアキく……!?」

「へぇ……真田くん、大人のお姉さんと付き合ってたのね」



 動揺しすぎだし、こいつは歳下だし、付き合ってないし、そもそも妹だし。

 だけど久遠寺はショックを受けてたみたいで。



「さ……サァ、ナァ、ダァ……!」



 いや俺悪くないよね。完全に勘違いしてるお前と、面白半分でからかってる琴乃のせいだよね。



「待った。あなた、私のアキ君に手を出すつもりかしら」

「誰がアンタのよっ」

「ふふふ。猫みたいに威嚇しちゃって……可愛い子かしら」



 琴乃、お前さっきから語尾に「かしら」しか付けてねーぞ。お前の大人の女性のイメージ安っぽすぎね?


 琴乃がスッと立ち上がる。

 ヒールのせいか、ほんの少しだけ久遠寺より琴乃の方が背が高い。

 それでも久遠寺は怯まず、見上げるように睨み付けた。



「アンタ、大学生? 自分の運命の人はどうすんのよ」

「え? あ、あー……」



 こいつそこまで考えてなかったな。目がバタフライのように泳いでるぞ。



「……つっ、つまみ食い、みたいなものかしら。お、大人の女なら、これくらい当たり前……かしら?」

「つまみ食……!?」



 琴乃ちゃん、あなたまた頭の悪い雑誌読んだでしょ。お兄ちゃん、本気であなたの将来が心配よ。


 てか他の客の迷惑になるから、そろそろやめてほしい。


 そんな琴乃と久遠寺のやり取りを見ながらハンバーグを食べてると、竜宮院が首を傾げて俺の隣に座った。



「ねえ、真田くん。本当のところ彼女は誰なの? 私にだけこっそり教えて」

「……ごにょごにょごにょ」

「! ふふ、そういうことね」



 こいつも楽しんでやがる。

 竜宮院は立ち上がると、久遠寺の肩に手を乗せた。



「梨蘭ちゃん、私達お邪魔みたいだし、行きましょう。2人の邪魔をしちゃ悪いわ」

「なっ、何言ってるのよ! 今更引き下がれるわけないでしょ!」



 頼むから引き下がって欲しい。切実に。

 てかこいつらが騒いでるせいで、他の客が俺達の方を見てんだけど。



「おい見ろ。修羅場だ、修羅場」

「このご時世にあんなに堂々とした修羅場、初めて見た……」

「しかもあの席にいる子達、レベルたけぇな」

「あんな子達が取り合ってるあの男、どんだけやり手なんだ……!?」

「ただのクズ男じゃないかしら……」



 やめてっ、俺をそんな目で見ないで!

 これ、俺はただの被害者なんだよぅ……。



「他に運命の人がいるのに、別の男に手を出すなんてとんだビッチね」

「あなたこそ、アキ君に執着しすぎじゃないかしら。あなた、アキ君のなんなの?」

「うぐっ……そ、それっ、は……」



 おいこっち見んな。

 目を逸らして黙々とハンバーグを食べてると、久遠寺は涙目になって睨み付けてきた。



「っ、真田っ! アンタがこんな尻軽女に走るような奴だったなんて思わなかったわ!」

「いや、別に走ったわけじゃ……」

「言い訳すんじゃないわよばかぁ!」



 浮気してないのに、浮気を問い詰められてる男の気分ッ。


 涙目の久遠寺は俺の胸倉を掴みあげると、無理やり自分の方を向かせ。






「アンタは一生ッ、私だけを見てればいいのよ!」






 爆弾を落とした。


 目を見開く琴乃。口に手を当てて上品に驚く竜宮院。

 で、やっちゃったみたいな顔をしている久遠寺。


 あー……どうするよ、これ。

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