第114話
「そんで、アッキーはリラと仲直りしたいん?」
「ああ、したい」
いや、そもそもあれは喧嘩と言えるのかわかんないけど。
でも、女の子である梨蘭に恥をかかせてしまったことには変わりない。
だったら謝りたい。
そんで一緒にいたい。
「なら、まずはリラから連絡や接触があるまで、そっとしておいてあげた方がいいかもねぃ」
「え、なんで?」
「まあ図らずも、アッキーはリラの羞恥心をくすぐってしまったわけですよ。そんな状態でアッキーから会うと、まーた恥ずかしくなっちゃうでしょ?」
ぐ、確かに……。
そう考えると、今はそっとしておいた方がいいのかも。
……でも、会いてぇな……。
「……あ、そういや、寧夏達は喧嘩することとかないのか?」
「ん? もちろんあるよ」
「そんな時、どうしてる?」
「特に何も。朝起きたら綺麗さっぱり忘れてるし、お互い翌日に持ち越さないタイプだから」
「あー。そういや、中学の頃からそうだったな」
この2人、自分の推しやゲームのシチュエーションで結構口論になるんだけど、次の日になるとケロッとしてるんだよなぁ。
そう考えると、この2人と俺らって正反対だから、なんも参考にならないな。
「暁斗達なら大丈夫だと思うぜ」
と、戻って来た龍也が突然そんなことを言い出した。
「どうしてそう思う?」
「久遠寺、暁斗のこと超超超超超大好きじゃん。今日か明日辺りに暁斗のところに来るんじゃねーの?」
「ウチもそう思う。そろそろ寂しがるよ、きっと」
「そう、かな?」
「うむ、間違いにゃい」
……2人がそう言うなら……そうなのかもな。
なんか、2人と話して気持ちが楽になった。
やっぱ1人で考えるより、誰かに相談した方がいいな。
「ありがとな、2人共。すっきりしたし、そろそろ行くよ」
「おん? 飯食っていかねーのか?」
「悪いな。もしかしたら家の方に梨蘭が来てるかもしれないし」
「一刻も早く嫁に会いたいってか」
「……まあな」
嫁いじりも、もう否定しないさ。
梨蘭は俺の嫁。異論は認めない。
「またな、2人共。今度は梨蘭と一緒に来るよ」
「おーう」
「次はタコパしよーぜー」
2人に見送られて、我が家に向かってチャリを漕ぐ。
今日は来てないとは思うけど、すれ違いになるかもしれないからな。
待ってるぞ、梨蘭。
それから2日。
「おい、まだ来ないんだけど」
『あれま』
龍也のスマホにビデオ通話をし、現状を報告した。
2人に相談してから2日が経ったにも関わらず、未だ梨蘭は家に来ず。
それどころかメッセージを入れても既読スルーされる始末。
「これ、俺本当に嫌われてないよな……?」
『赤い糸で繋がってるから、それは大丈夫だと思うけど』
「だよなぁ……」
だけど、これだけ無視されると心配になるんだけど。
「……赤い糸同士で繋がってて、嫌われることってないよな?」
『それはないと思うが……そういや、そんな話聞いたことないな。調べてみるか』
「俺も」
んー……運命の人、嫌い、検索っと。
どれどれ……。
「いっ!?」
『うわ、これは……』
運命の人を嫌う、なんて記事やサイトは見当たらないが……。
【イライラ】運命の人が女性と喋っててキレそう
【急募】運命の人に色目を使って来た女の○し方
【悲報】嫁が高校の同級生(男)と会うらしい
Oh……。
「運命の人が好きすぎて、異性と喋っているのを我慢できず殺害、なんてニュース記事まであるんだが……」
『暁斗、こっちは監禁事件なんかも出てきたぞ』
…………。
「俺、謝ってきます」
『死ぬなよ』
「死亡フラグやめて」
通話を切り、急いで準備をして玄関に向かう。
先に謝るなんて男のプライドが許さない?
その程度のプライド、卵かけて犬にでも食わせとけ。
こんなところで変な意地張って今後の人生左右されるなら、土下座でも靴舐めでも余裕でできる。
靴を履き、梨蘭の家に向かって走り出すと。
「あれ? 暁斗、どこか出かけるの?」
梨蘭がいた。
……え、梨蘭?
「え、と……?」
「はいこれ。この前借りてた服、返しに来たわよ」
「…………」
「……なんで黙ってるのよ」
いや、その……。
……とりあえず。
「この度は大変申し訳ございませんでした」
土下座した。
「ちょっ!? な、何してんのよアンタ!?」
「謝罪です。必要とあらば靴も舐めます」
「道端でそんなこと言うんじゃないわよ!」
梨蘭が慌てているのが伝わってくる。
路上でも公共施設でもどこでも、悪いことをしたら即謝る。でないとあの記事みたいに……ガクブル。
「ままー、あのおにーちゃんなにしてるのー?」
「しっ、見ちゃいけません……!」
「~~~~! と、とにかく来なさい……!」
梨蘭に無理やり立たされ、家の中に連れ込まれた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。だから監禁は許してください……!」
「アンタ、私に謝りたいの!? それとも怒らせたいの!?」
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